新たな章のはじまり
育成上手なPeople Managerの行動様式
数年前から欧米企業で始まったパフォーマンスマネジメントの変革は、日系企業にも確実にインパクトをもたらした。具体的には、1on1というアプローチを導入し、頻繁かつタイムリーな対話やフィードバックを通じて人材育成を推進する企業が増えてきている。
混沌として先行きの見えない世界において、ヒトモノカネという経営資源でヒトの重要性が高まりつつある今、この傾向は非常に望ましいものであると考える。
こうしたヒトに投資する土壌が育まれ、人材育成をさらに進化させていくために求められるPeople Managerの行動様式について仮説を提示したい、それが本稿の趣旨である。
1.「自分1人で育てる」という意識を手放す
2. メンバーとの関係性の質を向上させる
3. アンテナを高く持つ
People Managerには、メンバーの成長に必要な要素を最適な人からアドバイスやフィードバックをもらえる場を作ることが求められている。誰がどのようなスキル・経験・知識等を保有しているのかを的確に把握し、適任者にアプローチできる関係性を日々構築することが重要だ。 社内に関しては仕組み化することで可能かもしれないが、社外にまで視野を広げ考えてみると、日頃から人脈を構築するセミナーや勉強会、書籍あるいは論文等に常にアンテナを立てておくことが求められる。こうした取り組みは自身の能力向上にもつながり、Learning agilityを高めていけるだろう。
上記の3つの行動様式は実際にはそんなに簡単なことではないかもしれない。しかし、継続学習することを前提としながら、自分自身がアドバイスやフィードバックできる分野とそうでない分野があることを潔く認め、配下のメンバーに対してもそのことをオープンに共有する率直さが重要だ。
こうした行動様式を備えたPeople Managerが増えていくことは、効率的かつ効果的な人材育成が組織全体で実現するだけではなく、エンゲージメントや組織内関係性の質の向上、ひいてはオープンイノベーションの素地を形成し、持続的な事業成長につながっていくのではないかと考える。
関連インサイト
-
創造的破壊
知彼知己、百戦不殆 ー福利厚生改革のファーストステップー
雇用の流動化によって人材獲得競争は激化している。従業員への提供価値訴求の重要性が増す中、福利厚生もその一翼を担う。他社との差異化を図り、多様化する従業員のエンゲージメントを高めるには、まずは自社の福利厚生の現状を適切に把握する必要がある。 -
創造的破壊
イノベーション創出のための組織・人材マネジメント
不透明な環境下、イノベーションの組織的創出がより一層求められている。本稿では、マーサー主催の研究会で取りまとめた「イノベーション活動を通じて企業価値を最大化するための人材マネジメントの空白地帯を埋める7つの原理原則」を取り上げる。 -
創造的破壊
「管理職」とは何者か?
そもそも企業の「管理職」とは何者で、どのような社員を指すのか?本稿では、日本の法的要件、一般的に求められる職務内容、またドラッカーやミンツバーグによる概念を踏まえた整理などから、「管理職」の定義や役割を整理するための素材を提供する。