DEI

グループとしての企業価値(経済価値+社会価値)の最大化へ向けたダイバーシティ 

グループとしての企業価値(経済価値+社会価値)の最大化へ向けたダイバーシティ

DEI ロールモデル対談 第4回

太陽誘電株式会社
経営企画本部 人事部 グローバル人事
蒼 萍萍(ツァン ピンピン) 様

中国にて日本人を対象としたヘッドハンティングおよび日系自動車部品メーカーにおける通訳等を経験の後、シンガポールへ移住し日系プリンターメーカーにて拠点人事業務に従事。2019年に太陽誘電株式会社(以下、太陽誘電)に入社し日本へ移住。現在は、グローバル人事担当として多数の変革プロジェクトを推進。


対談当日にご同席いただいた太陽誘電人事部の皆様
和久井 貴志様
西岡 俊哉様
林 健二様

インタビュアー:田原 早耶香
組織・人事変革コンサルティング部門 アソシエイトコンサルタント

今いる環境でできることをやり切り、場所を問わずスキル発揮の場を求めてステップアップする

蒼 萍萍(ツァン ピンピン)様(以下、ピンピン様)のこれまでのキャリアについて教えていただけますか

(ピンピン様)中国大連の大学を卒業後、日系エグゼクティブサーチ企業の中国オフィスでヘッドハンティングを担当しました。ただ、社会人経験が浅く相手の職務内容を知らない状態では難しい仕事だと感じたため、様々な仕事のプロセスが見えるところで働くべく、日系自動車部品メーカー中国拠点の品質管理部で通訳を経験しました。

その後、夫の転職に伴いシンガポールへ移住したのを機に、日系プリンターメーカーの現地拠点へ転職し、人事としてのキャリアをスタートさせました。住む国・働く環境・仕事の内容を一度に大きく変えることになりましたが、好奇心が強かったこと、語学力には比較的自信があったことから、不安感よりわくわく感の方が強かったことを覚えています。

その後、一拠点での人事に留まらずより大きな組織で自分のスキルを発揮したいと思ったこと、落ち着いた雰囲気に良い印象を抱いていた日本で暮らしたいと考えたことから、太陽誘電に転職しました。

キャリアにおけるターニングポイントを教えてください

(ピンピン様)一つ目は大学院で学んだこと、二つ目は太陽誘電へ転職したことです。

シンガポールでは、現場人事としてできることはやりきったと感じた一方、目の前の問題解決ばかりに追われて深く考える余裕がなく、また深く考えるにも専門知識が不足していることに課題を感じていました。そこで、仕事と並行して大学院に通い、戦略人事について体系的に学ぶことにしました。人事の専門家・実務家が集まる場での講義・議論を通じて、オペレーティブな人事から戦略人事へと視点を高められたことが、大きなターニングポイントだったと感じています。

その後、より規模の大きな日系企業への転職にチャレンジし、太陽誘電でグローバル人事戦略に携わり始めたことが次のターニングポイントとなりました。現在はグローバル人事変革プロジェクトの担当として、グローバルでの役割グレーディングや人事ガバナンスの検討、海外子会社人事制度の課題解決等を推進しています。大学院で得た知識を実務に繋げることができ、戦略人事の面白さを感じている毎日です。

異文化環境で働くコツは、違和感を共有できるメンターを見つけること、“There is always a reason behind” 絶対何か理由があると考え理解に努めること

林様(写真左)、西岡様(写真中央)

今まで3か国で働かれたご経験をお持ちとのことですが、中でも日本に転職された際に直面したチャレンジはありましたか

(ピンピン様)多次元の異文化対応です。転職直後は、意思決定にとても慎重であることや曖昧な表現でのコミュニケ―ションに戸惑うことが何度かあり、入社して約3年が経ちますが今でも日々文化の違いというチャレンジを感じています。

そのようなチャレンジに直面した際、意識していることはありますか

(ピンピン様)メンターに相談することです。違和感を共有し、悩みを打ち明けられる同僚の存在に支えられてきました。今、メンターとして担当していただいている方は、中途入社で海外出向も経験されており、外部視点を持っているという点で私と共通した良き理解者であると感じています。また、豊富な人事経験を持ち、仕事における良き師だと思ってよく相談しています。

周囲の方からの反応で印象に残っているものはありますか

(ピンピン様)異なる意見に寛容で、まずは受け止め耳を傾けてくださる姿勢に助けられました。そのような方々に囲まれていなければ、上手く組織に馴染むことはできなかったと思います。例えば和久井さんは、会社にとって重要な人事案件の方向性を纏めていく立場にありながら、「違う」とはじめから私の意見を否定するのではなく、「そのような意見もあるよね」とまずは受け止め尊重してくださります。入社直後は意見を目上の方に発信することへの躊躇もありましたが、そのような受け止め方をしていただけたおかげで、次も恐れずに自分の持つ観点を伝えようと思うことができています。

また、西岡さんが背景や理由を丁寧に教えてくださったことから、日本の組織が持つ考え方への理解が深まりました。「非効率ではないか」「このような堅い考え方は信じられない」等と感じたことでも、“There is always a reason behind”、追求すると絶対何か理由があると考え、本質的な考え方の違いや裏にある背景を理解するためのコミュニケ―ションをとるよう心掛けています。

「違いがあることが価値」- 新しい世界を認め、その中で自分ならではの価値を発揮する

異文化環境での挑戦をしている方へのメッセージをいただけますか

(ピンピン様)まずは、先入観を持たず時間をかけて様々な情報を吸収し、新しい世界を認めることを大切にしていただきたいと思います。また、相手にわかりやすい方法で、自分の価値観や考えを伝えることも必要です。その際に、他の人と違いがあることが価値であると認識し、自分の持つ価値を発揮することを意識してください。例えば私自身、周囲が日本人ばかりの環境において「日本人らしくならないと」と考えるのではなく、外国人としての価値を期待されていると自覚しその価値を発揮することが大切だと考えています。はじめはおかしいと思うこと・思われることがあっても、否定したり我慢して合わせたりするのではなく、時間をかけて互いを理解することが重要だと感じています。

今後の成長のためには、海外拠点の人材開発・グループ内でのダイバーシティ推進を通じた、計2万人超のグループ人材力の最大化が鍵になる

ピンピン様をはじめとする多国籍人材の採用や、海外各拠点における現地人材の管理職登用等を進められているかと存じますが、貴社の経営戦略の中におけるダイバーシティ施策の位置づけについて教えていただけますか

(和久井様)目的はあくまで経営目標の達成であり、経営戦略・人材戦略の実現の過程で、必然的にダイバーシティが実現されるという姿を描いています。今後の成長目標の実現にあたり、海外売上高比率約9割、海外生産比率約7割の電子部品メーカーである弊社においては、海外拠点の人材を含めたグループ計2万人超の人材力の最大化が鍵になります。特に、各海外拠点の次期経営者層の育成に危機感を持っており、施策の一つとして、海外各拠点から日本・その他海外拠点へのグローバル出向の促進に取り組もうとしています。グループとしての企業価値最大化へ向けた経営戦略のあるべき姿を考えると、人事戦略として海外拠点人材の育成・活用は必須であり、その中で結果的にダイバーシティのある組織が実現されていく、という形になると考えています。

和久井様(写真右)

海外拠点の人材にどのような活躍を期待されているのでしょうか

(和久井様)“Bridge Person”として、本社の視点や最新の動きを理解し各拠点へ伝搬する役割や、日本・海外拠点双方の文化・言語・意思決定方法を理解しコミュニケーションを円滑化する役割を担い、将来的には各海外拠点の幹部として活躍していただきたいと考えています。

私が海外出向した際、言語や技術面で高いスキルを持つ社員に出会い、彼らにより広い活躍の場を提供したいと感じました。グループ内では、経理・法務・人事等の専門家、商品開発・技術営業・製造等を担う技術者をはじめ、多くの職種においてグループとしての動きを理解し自立的に動く人材が必要とされています。海外拠点の優秀な社員に、出向等を通じてグループの目線を把握してもらう機会を提供することが必要だと考えています。

取組みの中で直面している困難はありますか

(西岡様)グループ内で様々な発想が飛び交う環境を作らなければグループ全体としての力が最大限に発揮されないと考える一方、日本側ではダイバーシティの考え方はなかなか浸透しておらず、日本の習慣・方法に囚われてしまっているという課題意識があります。海外出向を経験した身として伝えようとしたことに共感してもらえないと感じる場面もあり、海外経験のない社員はダイバーシティのある組織へのイメージが湧きづらいのではと思います。日本において、海外拠点からの出向者やピンピンさんのようなバックグラウンドを持つ社員を増やし、多様な視点を持つ人が近くにいるという環境を増やしていくことも、社員のマインド変革には必要だと感じています。

経営目標達成のために必然的に実現されるべきダイバーシティ、という貴社文脈におけるストーリーに共感しました。また、異なる考え方を受け入れながら自身の視点を発信するピンピン様の姿が今後活躍するBridge Personのロールモデルに、そして互いの考えを尊重し信頼関係を築かれているピンピン様と周囲の皆様の姿が、グループ全社員へのロールモデルとなっていくのではと感じました。貴重なお話、ありがとうございました。

2022年3月1日 対談実施

写真撮影のために一時的にマスクを外しています

【編集後記】

本対談では、前半でピンピン様のご経験、後半で太陽誘電としてのダイバーシティへの考え方についてお伺いしました。

ピンピン様へのインタビューでは、強い好奇心と向上心を持ってキャリアのネクストステージへ次々と挑戦していく姿、異文化へのチャレンジにも本質的な違いを探りながら柔軟な姿勢を持って乗り越えておられる姿が印象的でした。違いの背後にある理由を追求し理解に努めるマインドセットの重要性は、文化の違いのみならず、年代・性別・専門分野・個々人の経験など、様々な違いに向き合う際に通じるものだと感じました。また、新しい環境に飛び込んだ際には、飛び込んだ先の文化・習慣・考え方に合わせようとしてしまいがちですが、自信を持って自分の視点を周囲へ発信していくことこそが「価値の発揮」なのだと勇気づけられました。

ダイバーシティへの考え方に関する対談では、グループの人材力最大化のために試行錯誤しながら施策検討されている人事部の皆様の真摯な想いを感じました。今後、ダイバーシティを活かす組織へ向けた会社全体のマインド改革への道のりは容易ではないとしても、ピンピン様と周囲の方々のような関係性が社内に広がれば、徐々に組織にも変化を起こせるのではないかと可能性を感じました。

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