DEI

多様な人財の活用に向けた挑戦 多国籍チームにおけるダイバーシティ・マネジメント 

イノベーションを支える多様性の文化

DEI ロールモデル対談 第7回

橋口 博行 様

朝日生命保険相互会社
経営企画部 企画室長

新卒入社。営業や経理、メガバンクへの出向を経て、代理店チャネルの立上げ等の新規事業開発を経験。その後、経営企画部にて新規事業開発、海外事業展開の企画を担当。海外事業の責任者として多国籍チームをマネジメントし、ベトナム事業を立ち上げた。2021年4月から現職。資本政策・収益管理等、経営企画全般を担当。

チャウ ミン タオ 様

朝日生命保険相互会社
海外・ダイレクト事業部 コアスタッフ

ベトナム出身。2016年に来日し、日本の大学院でMBAを取得。2017年入社。主に海外事業展開に関わる業務に従事し、ベトナムでの事業立上げに参画。現在はベトナムにて展開している事業の拡大に向けた企画・運営を担当。

本田 薫恵 様

朝日生命保険相互会社
人事部 ダイバーシティ推進課長

神戸支社に専任職として入社。支社・営業所において、事務職として様々な職務を経験。その後、神戸にてオフィスリーダー、総務部長を経験。2020年4月、本社人事部へ異動となり現職。女性の活躍推進やダイバーシティ推進等を担当。


インタビュアー:原 綾乃
組織・人事変革コンサルティング部門 アソシエイト

未知の世界で信頼関係を築き、視野を広げた出向経験

橋口様のこれまでのキャリアを教えてください

(橋口様) 新卒で入社した後、支社での営業を3年半、本社経理を5年担当しました。その後、ポストチャレンジ制度*を活用して、メガバンクへトレーニーとして出向し、法人営業企画を2年担当しました。帰任後は新規事業ユニットに配属され、代理店事業の立ち上げやテレマーケティングを7年担当。経営企画部 新規事業戦略室長となった後は、代理店事業の分社化プロジェクト、海外マーケットの開拓、ベトナムでのビジネスの立ち上げに取り組みました。2021年4月からは企画室長として、資本政策・収益管理・経営計画の立案・取締役会の運営等を担当しています。

*朝日生命の社内公募制度。現任の職種に関わらず社内の他職種や社外への出向にチャレンジすることのできる制度

キャリアの中でのターニングポイント、または現在のコミュニケーションスタイルの原点となっている経験はありますか

(橋口様)朝日生命に勤めながら全くの異業種にチャレンジし、外から朝日生命・生命保険業界を眺めることができた出向は、自分を大きく成長させる経験だったと思います。

業務知識や法人顧客との取引経験がない状態から始まり、どのように企画書を書けば良いかを模索する半年間を過ごしました。書き言葉の言い回しや使い方の真似から入り、銀行の仕組みや支店の仕事、行員はどの方向を見て仕事をしているのかを学んだことを覚えています。企画書の書き方をマスターしてからは仕事を面白く感じるようになりました。

借方・貸方も分からない状態で経理へ異動したときも、新規事業を立ち上げたときもそうですが、全く自分のことを知られていない環境で相手に理解してもらう場面や、背伸びをしてでもやらなくてはならない場面を多く経験しました。これらの経験が、「自信を持って自分の意見を伝える」という現在のコミュニケーションスタイルや、「やればできる」という考え方に影響していると思います。

帰任後は新規事業に注力 - ゼロからの海外ビジネス立ち上げ

銀行の法人営業企画への2年間の出向を終え、帰任後はどのようなミッションが与えられたのでしょうか

(橋口様)最初に配属された新規事業ユニットには机とPCだけが置いてありました。本当に何もないところから新規チャネルの検討がスタートし、ここでは銀行窓販チャネルの立ち上げに携わりました。

その後異動した経営企画部では、英語が話せない中、海外ビジネスをゼロから立ち上げる責任者に任命されました。何から手を付ければ良いか分からず、大きなプレッシャーを感じました。

初めて取り組んだ「海外ビジネスの立ち上げ」においては、何から、どのように取り組まれたのでしょうか

(橋口様)ビジネスでは必ずしも自分の知識や経験だけで答えを出す必要はなく、今まで築いてきた人的ネットワークなども活用しながら答えを出せばいいと考えています。初めて取り組んだ海外ビジネスの立ち上げでは、既知の取引先に片っ端から相談し、うち数社から海外情報の提供・提携先候補の紹介を受け、交渉に進みました。

次に障壁になったのは海外ビジネスのスキルです。プレゼンひとつ取っても、日本人の、まずは会社案内、続いて足元のビジネス、今後の成長予定…といった積み上げの説明では飽きてしまうようで、商談の場で相手が寝てしまったこともありました。海外ビジネスでよく目にする、弊社はこんな凄いことができます!いかがですか?というプレゼンテーションが必要でしたね。

その後、人事部の紹介で国内MBAのインターンを受け入れ、それがきっかけとなり、海外人財の採用に繋がりました。自分が今更海外ビジネスの基本を学ぶというよりは、海外ビジネスに慣れているMBA受講生の力を借りたいという気持ちが強かったです。勉強になりました。自分にとっては海外ビジネスのスキル、彼らにとっては保険の業務知識、互いに無いものを補いあってビジネスを進めていきました。

6か国11名の外国人スタッフとの協働 - 多国籍チームのマネジメント


海外人財の獲得・定着にあたってはどのような工夫をされたのでしょうか

(橋口様)最初に採用したのはタイ国籍、フィリピン国籍のメンバーでした。お二人とも優秀でとても良い方たちだったのですが、入社段階で日本企業の仕組みを説明し切れていなかった点は反省しています。自分達の頑張りがそのまま給料に反映されるという考えが前提にあったため、日頃から「よくやってくれている」と労っていたことが給料に反映されると思っていたようです。先輩後輩の関係性においても、彼らは上司部下の関係を重視する一方で、上司ではない「先輩」の指示やグループオリエンテッドな仕事の進め方が理解できずに頻繁にトラブルになりました。

以降、事前に朝日生命の仕組みや考え方を説明し、賛同いただける方を採用しています。基本的に2か月間のインターンで良かった方の中から採用しているので、朝日生命がどのような会社か、職場や仕事のスタンスを理解して入社いただいていると思います。  

 

実際の業務においては上司としてどのようなコミュニケーションを心がけていましたか

(橋口様)英語はあまり話せないですが、もともと外国人とのコミュニケーションに抵抗はないです。主張の強い外国籍部下に「この上司大丈夫か?」と不安を与えないよう、自信を持って意見を言うようにしていました。会議の場ではチームメンバー全員の意見を聞き、最後に自分の意見を伝えています。中途半端な発言は避け、曖昧にせずにノーと伝えるコミュニケーションが必要です。

単独で仕事を行う傾向のある外国人スタッフへの対応として、意識的にメンバー間の交流を行い、風通しを良くするチームビルディングを大切にしています。

勤続5年目を迎えるベトナム人スタッフ、タオ様が朝日生命で働く理由

入社の経緯や、入社後にご苦労された点を教えてください

(タオ様)前職ではベトナムの日系エンジニアリング会社にて、人事として採用や教育に携わっていました。2016年に来日した後、1年間のMBAを経て朝日生命に入社しました。MBAから保険業界という選択は珍しいですが、朝日生命の採用ではジョブが明確になっており、事業戦略の立案、ベトナムでの新規事業の立ち上げなど、MBAでの学びを活かして母国ベトナムに貢献できることを魅力に感じ、入社を決めました。

入社後の日本語や保険知識の勉強はとても大変でしたが、周囲のフレンドリーなコミュニケーションやサポート、成果の大小に関わらず上司が認めてくれたことがモチベーションになりました。入社後も社内勉強会や日本語学校で学習を続けています。

 

橋口様のマネジメントや、所属チームについてはどのような印象をお持ちでしょうか

(タオ様)日本語や保険の専門知識がないまま入社し、最初は不安を感じていましたが、橋口さんが「やればできる」と支えてくださり、安心できました。また、常に一段階上の明確な目標設定をした上で、達成に向けた具体的な方向性を提示してくださったこともモチベーションになりました。

チームに日本人と外国人のボーダーラインはありません。言語とコミュニケーション、双方においてお互いが歩み寄り業務を円滑にしています。失敗を恐れず挑戦し続けるカルチャーがあり、部下も「何を言っても大丈夫」と思えるので、安心して意見を共有し、一緒に新しいアイディアを模索できます。

 

貴社で働く海外人財について、今後より注力していきたい点はありますか

(橋口様)現在は海外・ダイレクト事業部を中心とした限定的な採用に留まっていますが、人事部とも調整しつつ、本人の意向次第では部門横断のキャリアも視野に入れ、社内カルチャーの変革を期待しています。今後は朝日生命における外国人スタッフのキャリアパスを示すべく、何名かを選抜して日本人と同じ経営幹部養成コースを受けてもらう等、将来的な異動・昇格を見据えた教育を行っています。

すべての事業の根幹となる「人財」の活躍推進。朝日生命におけるDEIの取り組み

ここまで企画室長 橋口様のキャリアや海外ダイレクト事業部のチームマネジメントにスポットライトを当ててきましたが、朝日生命全体でも、かねてより多様な人財の活用に取り組んでいらっしゃいますね。人事部 本田様より、ご紹介いただいてもよろしいでしょうか

(本田様)特に注力しているのは女性活躍の推進です。2006年度から朝日生命ポジティブ・アクションをスタートし、リーダー登用の促進、職務領域の拡大に向けた教育の充実など、働く環境の土台固めに着手しました。これにより、取り組み開始前の2005年に4%だった女性リーダー比率は現在31%まで上昇しました。今後は「朝日生命の新たな活力を生み出す女性のエンパワーメント向上」をスローガンに掲げ自ら目標を定め、挑戦・行動を起こし、キャリアを切り拓くステージとしていきたいと考えています。

現在の課題、および今後注力していきたい取り組みにはどのようなものがありますか

(本田様)現在の課題としては、上級管理職に女性がまだ少ないことが挙げられます。課長職以上の従業員向けには、役員によるメンター制度やマネジメントゼミ、社外で活躍されている女性役員の方から話を聞くといった上級管理職プログラムを提供しています。また、今年度からは課長職手前のグループリーダー向けにもメンター制度を取り入れ、本社の部長がメンターを担当しています。女性の積極的な手上げが増えていますし、1on1ミーティングでのコミュニケーションを通じ、意識の変化は確かに感じています。

できない理由を並べるよりも、できる理由を考える。今日よりも明日の方が良くなると信じる - ベトナムから学んだマインドセット

最後に橋口様、タオ様、これからのキャリア展望、読者へのメッセージをお願いいたします

(橋口様)「この仕事、橋口さんがやった」と言われるような仕事をやりたいと考えています。世の中にインパクトのある仕事をするためには、今のままでは実力不足で、知識や経験、人的ネットワークも必要です。成長に年齢は関係ないと思うので、一歩一歩やっていきたいですね。若手へのメッセージとしては、無理難題を言われたときでも、できない理由を並べるのではなく、まずはできる前提で物事を考えてほしいです。できるかできないか分からなくても、周りは「できます」という人の方をポジティブに見てくれます。「できる」と言ったうえで、できる方法を考える。私自身もそのようなスタンスでやっています。毎月ベトナムを訪問している中で、晴れ空の下バイクで走り、「今日より明日のほうが良くなる」と信じるベトナム人の考え方を魅力的に感じました。先ずは自分の周りの人から、そのようになってほしいと考えています。

(タオ様)日本語だけでなくビジネス知識、コミュニケーション能力を高め、管理職になるために成長していきたいです。日本人と外国人のチームで協働する際には、フレンドリーにお互いが歩み寄ってサポートすることで、よりスムーズに仕事ができると思います。

 

2022年6月15日 対談実施

写真撮影のために一時的にマスクを外しています

【編集後記】

本稿では、チームマネージャーの役割・コミュニケーションという角度から、DEI推進事例を紐解いています。自身が文化的マイノリティとなる中で奮闘した経験を糧に、個の強みをチームの力に昇華させて困難を乗り越えた橋口様、そして海外事業立ち上げメンバーとして異文化に飛び込んだタオ様のキャリアストーリー。挑戦し続ける姿に勇気づけられるとともに、改めて、属性に関わらず誰もがダイバーシティの主体であるということにも気付かされる対談となりました。

長い歴史の中で創り上げた組織を変容させ、持続可能な人財活用に向けた挑戦を続ける朝日生命。そのなかには、違いをオープンに共有し、異文化の中でイキイキと働く社員の姿がありました。

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