マーサー「グローバル人材動向調査2026」を発表
従業員の「活力」は44%と2018年以降で過去最低
AI雇用不安は40%、AIスキル習得機会あれば63%が給与10%減も受容
企業に問われる人材戦略の再設計
マーシュ(NYSE:MRSH)の一事業体であり、クライアントの投資目標の実現、仕事の未来の形成、従業員のウェルビーイングおよび退職後における生活の質の向上を支援するグローバルリーダーであるマーサーの日本法人マーサージャパンは、「グローバル人材動向調査2026」の結果と日本版レポートを発表しました。世界16地域・16業界の経営幹部、HRリーダー、投資家、従業員の計約12,000人を対象に実施したもので、AIの急速な普及と従業員の活力低下が同時進行するなか、経営幹部・投資家・人事の間に深刻な認識のズレが生じている実態が明らかになりました。
本調査結果のサマリー
- 「Thriving(個のウェルビーイングによる活躍実感)」従業員の割合は44%で、同指標を導入した2018年以降で過去最低(2024年の66%から22ポイント低下)
- AIによる雇用喪失への不安は、2024年の28%から2026年は40%へと大幅に上昇
- 従業員の63%が、AI・デジタルスキルを習得する機会を得るためなら、給与の10%増を犠牲にしてもよいと回答。「スキル」が新たな通貨となりつつある
- 自社の人事機能が「戦略に組み込まれている」と評価する経営幹部はわずか8%にとどまり、経営と人事の認識ギャップが深刻化
- HRリーダーが挙げる2026年の人材課題トップは「重要デジタルスキル人材の確保困難」(59%)。燃え尽きや長期病欠による人材流出(44%)、エンゲージメント低下(43%)も2024年比で急増
従業員の活力が過去最低を記録
従業員の活力に関わる「Thriving(個のウェルビーイングによる活躍実感)」と回答した従業員の割合は、2018年の指標導入以来、過去最低を記録しました。本指標は、健康、財務状況、キャリアの三つの観点から、従業員が充実している状態を示すものであり、2024年の66%から2026年は44%へと22ポイント低下しています。
燃え尽きて意欲を失った従業員を抱えたままでは、組織は持続的な変革を成し遂げることができず、テクノロジー導入による生産性向上も一時的なものにとどまります。飛躍的なパフォーマンスは、人材を酷使することで生まれるものではありません。AIによって人の力を引き上げ、人材に関する科学とデータに基づくインサイトで支えることで、初めて実現できるものです。
AI不安の急増~「共感のギャップ」への早急な対処が必要
従業員の「AIによる雇用喪失」への不安は、2024年の28%から2026年は40%へと大幅に高まりました。従業員の不安とリーダーの認識のあいだにある「共感のギャップ」にリーダーが早急に向き合わなければ、この不安は価値創造、アジリティ、生産性の向上を妨げる要因となります。
リーダーに求められるのは、信頼と心理的サポートを基盤とした「AI活用を推進する企業文化」の構築です。具体的には、三つの行動が鍵となります。AIがもたらす心理的・感情的な影響にオープンかつ透明性をもって向き合うこと。ツールへの公平なアクセスを提供すること。そして、継続的なリスキリング・アップスキリングに組織として取り組む姿勢を示すことです。
そのうえで、AIにできること・できないこと、AIが業務を代替する場面と補完する場面、AIが新たに生み出す業務について、明確なメッセージを発信することが重要です。これが従業員の不安を和らげ、自信を育む土台となります。こうした取り組みは投資家からも支持されており、投資家の77%が「AI教育や研修を通じて従業員の能力向上に積極的に取り組む企業」への投資意欲が高いと回答しています。
スキルが新たな通貨~昇給よりスキルアップを選ぶ従業員
AI中心の変革を支える基盤となるのが、「ダイナミックなスキルインテリジェンス」です。これは、スキルの需給変化を継続的に把握し、スキルギャップを可視化する仕組みを指します。
AIエージェントの台頭により求められるスキルが急速に変化するなか、従業員は自身のスキルが陳腐化しないよう、適応し続ける必要性を強く感じています。自身のスキルが今後も通用するかを懸念する従業員は、2024年の17%から2026年は47%へと大きく増加しました。さらに従業員の63%は、AIやデジタルスキルの習得機会を得られるなら、給与の10%増を犠牲にしてもよいと回答しています。
一方、「将来のスキルギャップを埋めるために十分な投資を行っている」と考える経営幹部は、わずか半数にとどまります。働き方が根本的に変わるなか、職場における新たな通貨は「職種」ではなく「スキル」となりつつあります。
経営幹部・投資家と人事の認識のズレ~成長を阻害する構造的断絶
経営幹部は生産性の向上を求め、投資家はAI投資へのリターンを期待しています。しかし、活力ある従業員と継続的な変革を支える組織体制がなければ、そのいずれも実現できません。
経営幹部や投資家がAIを通じた成長を追求する一方で、人事は、AIが業務に与える影響への対応を優先課題として位置づけていません。「自社の人事機能が戦略的に経営や意思決定に組み込まれている」と評価する経営幹部はわずか8%にとどまっており、経営幹部の多くは、人事が事業戦略との連動や、最も重要視されるべき成果に焦点を当てていないことに不満を抱いています。メッセージは明確です。今すぐ変革に踏み出さなければ、人事は組織内での役割を失うおそれがあります。
人材課題がビジネスリスクに直結~HRが予測する2026年の課題トップ5
| 順位 | 課題 | |
|---|---|---|
| 1位 | 重要なデジタルスキルを持つ人材の確保が困難 | 59% |
| 2位 | 人件費の上昇 | 52% |
| 3位 | 燃え尽きや長期の病欠による人材流出 | 44% |
| 4位 | エンゲージメント低下による生産性への悪影響 | 43% |
| 5位 | 生産性の低下 | 43% |
注目すべきは、2024年と比べて燃え尽き関連(16%→44%)とエンゲージメント低下(14%→43%)への懸念が急増している点です。
一方、回答率が最も低かった課題は「新たなテクノロジーの導入の遅れ」(23%)でした。これは、変革の鍵がテクノロジーそのものではなく、人材にあることを示しています。
今回の調査結果は、AIが世界中の組織・個人に対してすでに大きなインパクトをもたらしつつあることを示唆しています。組織にとっても個人にとっても、今こそ変化を機会と捉え、仕事のあり方やスキルをアップデートし、AIが常在する新しい現実に対応していくことが求められています。(マーサー ジャパン 取締役 組織・人事変革部門 代表 山内博雄)
本調査結果は、日本企業が直面する人材マネジメントの構造的課題を、改めて浮き彫りにするものです。まず、日本企業においても長年の課題とされてきた従業員エンゲージメントの低迷が、AI導入の加速によってさらに顕在化しています。「Thriving(個のウェルビーイングによる活躍実感)」従業員の割合が44%にとどまるというグローバルの数字も深刻ですが、日本も「Thriving(個のウェルビーイングによる活躍実感)」従業員の割合が49%、「Not Thriving(活躍実感がない)」従業員の割合が18%とグローバル同様の結果が出ており、賃上げだけでは解決しない構造的な課題として、ワークデザインそのものの見直しが急務となっています。
また、日本企業の多くでは、人事機能が依然として制度運用に比重を置いており、経営戦略との連動という点で改善余地があります。人事を戦略的と評価する経営幹部が日本では20%と、グローバル平均の8%よりは高い結果が出ていますが、今後2年でグローバル平均では32%、日本では30%の経営幹部が、人事が戦略に組み込まれるようになることを期待しています。
さらに、日本の従業員は「雇用の安定」を重視する傾向にありますが、AIによる雇用喪失への不安は、グローバル平均で40%、日本では37%となっています。重要なのは、リスキリング投資を「コスト」ではなく「組織のレジリエンス(回復力)向上策」として位置づけることです。給与10%減を受け入れてでもスキル習得の機会を得たいと考える従業員がグローバルでは63%、日本では65%となっています。グローバル・日本共に6割を超えるという結果は、日本企業の人事施策における報酬設計の根本的な見直しを迫るものと言えます。
| 調査概要 | マーサー グローバル人材動向調査2026(Global Talent Trends 2026) |
| 調査実施期間 | 2025年9月~10月(約1カ月) |
| 調査方法 | 第三者機関によるオンライン調査 |
| 調査対象 | 世界16地域・16業界/経営幹部・HRリーダー・投資家・従業員 |
| 回答者数 | 約12,000人(従業員9,250/HRリーダー1,650/経営幹部825/投資家100) |
マーサー「グローバル人材動向調査2026」について
本レポートは、2025年9月から10月にかけて実施された調査により、世界中の約12,000人の経営幹部、HRリーダー、投資家、従業員から得られたインサイトに基づいています。
日本語全文は以下よりダウンロードしてください。
マーサーについて
マーサーは、リスク、再保険と資本戦略、人材戦略、資産運用、経営コンサルティングの領域におけるグローバルリーダーであり、世界130ヵ国にわたるクライアントに対してサービスを提供しているマーシュ(NYSE: MRSH)の一員です。年間総収入270億米ドル超、総勢95,000名以上のスタッフを擁するマーシュは、未来への確かな視点を通じて、ビジネスを成功へと導くサポートをしています。マーサーについての詳細はmercer.com、あるいはLinkedInをご覧ください。
【本件に関する、報道関係者様お問合せ先】
マーサージャパン株式会社 広報 太田泰維
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