マーサー 「グローバル年金指数ランキング」(2022年度)を発表 - 確定拠出年金制度における主要な課題が浮き彫りに
2022年10月12日
- アジアではシンガポールがトップを維持し、日本とマレーシアが最も改善
- 世界人口の65%をカバーする44の退職所得制度を比較
- アイスランドが2年連続で首位
- 確定給付型から確定拠出型への移行が進む中、退職者がより大きな財務リスクを負うことに
マーサーとCFA協会は、第14回マーサーCFA協会グローバル年金指数(MCGPI) を発表した。アイスランドの退職所得制度が再びトップとなり、オランダとデンマークがランキングの2位と3位を維持している。確定給付年金(DB)制度から脱却する雇用主が増える中、個人が財政的責任を負う確定拠出年金(DC)制度に伴う課題が浮き彫りとなった。
シンガポール(74.1)は、2021年に比べ総合指数がわずかに落ち込んだものの、十分性と持続性のサブ指数が大幅に上がった。アジアでは中国本土(54.5)、インドネシア(49.2)、フィリピン(42)を除き、全体的に改善が見られる。
日本(54.5)は2021年のDから今年はCへ、マレーシア(63.1)はCからC+へ、アジアで最もグレードが格上げした。韓国(51.1)、香港特別行政区(64.7)、インド(44.4)、台湾(52.9)も前年に比べ向上している。
MCGPIは、世界人口の 65% を網羅する44ヵ国の年金制度を包括的に調査したものである。当指数は、世界各国の年金制度を指数化し、各制度の欠点を浮き彫りにし、より充実した、持続可能な年金給付を提供するために改革すべき領域を示している。今年は新たにポルトガルのシステムが加わった。
マーサーアジア ウェルス・ビジネス・リーダーを務めるJanet Liは、本年度の結果について以下のように言及する。
「パンデミックの経済的影響や不安定な地政学的状況により、アジア市場だけでなく世界全般で優先事項の見直しが行われました。アジアは、総合指標でまだ世界平均に及ばないものの、ほとんどの市場で前年比プラスに転じています。それでもなお、高齢化と出生率の低下という課題は続いていきます。各国政府は、退職金制度の洗練と改善を後回しにする余地はなく、速やかに優先順位をつけて行動に移していかなければなりません」
マーサージャパン 年金コンサルティングのシニア アクチュアリーであり、日本アクチュアリー会正会員 年金数理人の須藤 健次郎は次のように述べている。
「地政学リスクによる経済状況の不確実性の高まりにより、個人はますます不安定な環境の中で、引退後の備えをしなければなりません。日本は高齢者の就業率が高いことが救いですが、これは公的・私的年金ともに仕組みが複雑で、引退後の収入が分かりにくいため、引退時期を計りかねていることが一因でしょう。各企業がDC投資教育などを通じて、従業員の退職給付制度への理解を深めることで、漠然とした不安を解消していくことが望ましいと考えています」
CFA 協会 アジア太平洋地域のマネージングディレクターであるNick Pollardは、ダイナミックな投資環境の変化についても指摘している。
「急激な物価上昇、金利の上昇、通貨の下落、資本流出などが大きな要因となり、短期的には厳しい見通しでアジアの発展の妨げとなっている中、アジアでも特に発展途上市場がパンデミックの影響を覆そうとしています。長期的にも、アジアやその他の地域でこのような傾向は継続し、それがニューノーマルとなるリスクに直面しています。迅速な年金改革を必要としていない市場はなく、政策立案者と業界関係者は、年金のバランスシートの妥当性と退職給付の持続可能性を確保するために集団的行動をとる必要があります」
確定拠出年金(DC)への移行は退職者の不安を増大させる
雇用主が DB プランで提供されてきた経済的な安全性から脱却し続ける中、個人は退職前後のリスクと機会を負わされることになる。退職時に生涯にわたり定期的な所得を受け取る DB プランとは異なり、一般的な DC プランでは退職時に一括して給付が行われる。さらに、多くの政府は、国の財政的な持続可能性を長期的に確保するために、退職時の財政支援のレベルを下げることを検討している。
その結果、多くの人は、退職後、以前の雇用主や政府からの大きな財政支援に頼れなくなる。従って、退職時にDC年金資産の価値を最大化するために、個人が最善の財務的判断を下すことが不可欠だ。投資スキームにおいて分散投資が重要な役割を果たすように、個人もまた、定期的な収入、適切な保護、資本へのアクセス、政府、個人年金、個人の貯蓄など、さまざまな金融支援源に分散して老後資金の確保に努めるようになるだろう。
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マーサー CFA協会 グローバル年金指数ランキング(2022)
マーサーCFA協会グローバル年金指数について
グローバル年金指数は、世界各国の年金制度のベンチマークとして、各制度の弱点を浮き彫りにし、より充実した、持続可能な年金給付を提供するために改革すべき領域を示している。2022年度においては、全世界の44の退職所得制度を比較し、世界人口の65%をカバーしている。今年は新たにポルトガルのシステムが加わった。各国の制度の総合指数は、「十分性 (Adequacy)」、「持続性 (Sustainability)」、「健全性 (Integrity)」に大別される50以上の項目から構成され、この3つのサブ指数を加重平均して算出している。グローバル年金指数は、世界的な投資専門家団体であるCFA協会が主催し、モナシュ大学モナシュビジネススクールに属するモナッシュ金融研究センター(MCFS)とプ、組織・人事、福利厚生・ウェルビーイング、資産運用におけるグローバルリーダーであるマーサーが協力した研究プロジェクトである。
マーサーCFA協会グローバル年金インデックスの詳細も併せてご覧ください。
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