野村ホールディングス × Mercer 社員のキャリア自律を促す人事改革
野村ホールディングス様では近年、「人が最大の資本」の基本方針のもと、人事制度改革・マネジメント改革に取り組んでこられました。
とりわけ、働き方やキャリア選択の幅をこれまで以上に広げることや、専門性の高いキャリア形成を実現する人事制度・自律的なキャリア開発を支援する施策の展開は、多くの日本企業が注目すべき先進的な取り組みです。
本セミナーでは、それら改革の背景や、その実態、成果としての現状をご紹介し、同様の課題を抱える経営、人事部の皆様にとってのヒントをご提供します。
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<プログラム>
- 第一部 野村ホールディングスが考える人的資本とは
- 第二部 社員のキャリア自律を支援するための取り組み
- 第三部 対談 「人材マネジメント改革に向けた野村の歩み」
<ご登壇者>
- 尾崎 由紀子様 野村ホールディングス株式会社 CHRO兼CHO
- 森本 智彦様 野村ホールディングス株式会社 Global HR COO
- 伊藤 千夏様 野村ホールディングス株式会社 グループ人材開発部 L&Dグループ2課長
第三部 対談:
「人材マネジメント改革に向けた野村の歩み」
<主なトピック>
- 「最大の資本」と位置づけられている人的資本については、どのように強くしていく方向性ですか?
- キャリア自律を進めていく上でのポイントはどのようなものですか?
- 職種別採用はどの程度進んでいますか?既存社員にも職種に属している感覚はありますか?
- 職種別の採用やキャリア構築を進める中で、報酬も職種別を意識して取り組んでいますか?
- 人事組織の改革にはどのように取り組んでいますか?
- 会場からの質疑応答
ご登壇者
尾崎 由紀子(おざき ゆきこ)様
野村ホールディングス株式会社
CHRO兼CHO(健康経営推進責任者)
取締役 執行役員 組織・人事変革コンサルティング部門 日本代表 パートナー
1.「最大の資本」と位置づけられている人的資本については、どのように強くしていく方向性ですか?
白井:マーサーの白井でございます。尾崎さん、(第一部の)ご登壇ありがとうございました。大変興味深いお話をいただけたと思います。ここからは、視聴者目線といいますか、きっと皆さんこんなことを聞きたいんじゃないかというところをお聞きしていきたいと思います。
「人が最大の資本」、これはまあその通りだと思いますが、例えば一つの考え方として、「最高の人を採用してその人をリテインする」ことで人的資本を拡充するということもあるでしょうし、もう一つ、「適切な環境、学ぶ環境やあるいはある種競い合うような環境を整え、競争を通じてレベルアップさせる、その中でキャリア自律も叶う、競争できる機会も増える。そういう環境を作る」という考え方、三つ目としては、「会社がある程度はレールを用意してその中でレベルアップしていく」という考え方などがあると思います。これらは例示ですが、やりたいと思っていらっしゃる「理念」はどの辺りにあるのかお聞きしてもよろしいでしょうか。
尾崎:まさに当社の人材マネジメント戦略に、今のご質問への回答があるかと思います。「野村グループの人材マネジメント戦略①」のスライドをご覧いただきますと、「挑戦」「協働」「誠実」という企業理念のもとに、評価・採用・育成・登用・配置をやっておりますが、ベストな人を採用してベストな方に居続けていただくには、その人たちの能力を最大限に発揮できる場所が必要だと思っています。
かつ、彼らの専門性をより高めていく。また、金融業界としてリスクカルチャー醸成といったところでの貢献を期待できる方を採用していっているわけですが、そういった人たちがどうやってエンゲージメントを高めて、かつ高い水準のままパフォーマンスを発揮するか、そこがまさに重要なポイントだと思っています。
そのためには、彼らへの機会提供や役割を与えるなどのオポチュニティだけではなく、彼らが働きやすい環境整備、例えば、多様性を受け入れる、個々の能力を発揮できるような、健康も含めて、周辺から整えていくというのが一番必要ではないかと思っています。
相互に切磋琢磨、レベルアップしていく環境についても今触れられていましたが、育成に関しては、基本的には価値観の源泉になると思っていて、彼らが高度な専門性を加速度的に修得して切磋琢磨しながら貢献できる機会の提供、より高度なスキルセットを身に着けられるようなプログラムを用意し、自らが勉強してキャリアの広がりを拡充させていく。それを人事としては「促す」ことが必要だと考えています。次のステップに向けて自らどんどんキャリアを広げていくところを求めているということになります。
白井:ベストな人を採用するというところはやはり志向されつつ、その方たちが活躍し続けられる環境を整える。この環境というのは「切磋琢磨する機会」というのももちろんありながら、「多様な人たちが働きやすい環境」を作ることも、人をリテインするためにとても大事だということですね。
尾崎:そうですね。近年は皆さん「仕事だけ」ということはなくて、ワークライフバランスも重要ですし、自分がいかに社会貢献できているのかという満足感とか、健康経営とかそういった志向の方も多いと思いますので、そういった方たちのニーズに応えられるような職場環境を整えていくのはやはり重要だと考えています。
白井:今のお話を総合すると、いい会社になっていい場を提供して自律的に切磋琢磨したり、活躍して居続けてもらおうというところに力を入れていて、会社が個人に何か強制するという概念は薄めな感じでいらっしゃいますか?
白井:例えば、一番いい人たちを集めたい、そのための魅力の訴求として、改めて整理すると何を訴求されようとしていますか? ある種の差別化といいますか。
尾崎:「野村」と聞くと「猛烈営業」とか、男性が大勢いてみんなオールバックで、ノルマをこなしてバリバリ営業するといったイメージがあったかと思いますが(笑)、当社の事業基盤とか提供するサービスは多岐に渡っておりますし、様々な業務があります。以前は全社一括採用、配置も配転も会社主導でしたが、今では、新入社員であっても自ら「こういうことをやりたい」という人を採用しています。時代にあった制度・仕組みといいますか、グローバル化もあり、商品もサービスも提供してすごく多岐にわたるということになると、多様性のある人材が必要になりますので、彼らが求める環境を整えるというのが大事で…話が戻ってしまいましたね。
白井:いえ、なるほど、ありがとうございます。お話を伺いながらすごく興味深く感じました。多くの方にとって野村さんはすごく営業の強い会社、でも事業基盤も業務範囲もものすごく拡大し、これまで強みとされていたことはもちろん現在でも変わらないとは思いますが、それ以外の部分も強くしていかないとならない現状があって、そうすると本当にいろいろなタイプの、性別とか国籍に限らず、専門性なども含めて、とにかくいろいろな人をリテインできないといけないというわけですね。
尾崎:そうですね、例えば、別にIT系の業務に入る人でなくても、全社員向けにグローバルにITリテラシーを高める研修プログラムを提供していて、仕事の範囲を超えてでも自らそういったプログラムを学ぶことができるようになっております。
2.キャリア自律を進めていく上でのポイントはどのようなものですか?
質疑応答 (Q&A)野村ホールディングス様からの回答
キャリア自律について
NBAとは別の研修体系として、新卒入社1年目研修や新任系研修を対面とオンラインを使い分けながら実施しています。
また、コンプライアンスやDEI関連など全社員に向けた研修は、動画視聴を中心に事後の確認テストやアンケートとセットで実施しています。
また、キャリア採用比率が高まる中オンボーディング支援がその重要性を増しますが、オンデマンド研修を整備し、入社タイミングによらず即戦力で活躍頂けるよう支援をしています。
前提として、社内公募の実施および、会社主導の定期異動を年に1回に減らすことで、ご質問のような状況が生じる可能性は低下しているととらえております。
さらに、キャリアデザインシートを利用し、各社員が将来取り組みたい仕事、希望する働き方、今後のキャリアプランなどについて、本人の希望をマネージャーや人事と共有し、定期異動についても、可能な限り、本人の意思を尊重しております。
この仕組みを機能させるために、メンバーのキャリアをプロデュースしていくことがマネージャーの重要な役割の一つであるということを、マネージャー研修等を通じて、意識づけを行っています。
ご指摘の通り、会社からの教育支援補助やプログラムの整備だけで多くの社員が自律的に取り組み始めるとは期待できないと考えております。
このため、単なる教育プログラムの解説やその案内にとどまらず、下記のような全方位的な変革を進めています。
- 評価対象者を持つ全マネージャーを対象とした研修により社内のカルチャー変革に取り組む
- 自律的なキャリアを選択するために率先して自己研鑽に取り組み、社内公募により自身の志向に沿うキャリア転換を実現する「成功例」を増やす。そのような例が異動に占める割合を高めていく
セミナーにおいて具体例としてご紹介した人事部門のケース(国内外で人事知識を学ぶeラーニングの受講)では、トレーニング受講を促す気運を高めるために、知見のある社員が特定の分野に関する勉強会を実施する、部長層が率先垂範して受講し部内に受講の感想をフィードバックする、通年での課題設定・評価の項目に「自己研鑽」をデフォルト設定する、といった取り組みを行っております。
公募・異動について
異動元部門や会社全体の状況を鑑み、補充なし、社内外からの人材調達等の対応を行っております。各部門がヘッドカウントと人件費含むコスト管理のオーナーシップを持っており、補充とするか、効率化を図りより少ない戦力での運営とするかは、基本的には、部門の判断に委ねております。
実は、部門内での小規模な異動は年1回に限らず、オフサイクルでの一部異動が行われてはいます。部門をまたぐような大きな組織異動は年に1回と定め、組織内での異動についてはそれ以外のタイミングでも対応することがあります。年1回へと変える取り組みは今期始めたばかりのため、状況を見ながら、これから進めていく、という段階です。
当然、それぞれの組織では人が抜けられないように魅力的な組織にしなければならないと思います。それらはマネージャーに求められる資質だと考えています。抜けられた側の負担は大きいですし、時には会社主導での異動や、外部採用で埋める場合もあります。その点、当社は日本企業のスタイルと、グローバルなジョブ型のスタイルを合わせたハイブリッドなあり方を指向しているため、比較的対応しやすいと思います。
ジョブ型雇用について
一般論としては、ジョブ型に適した人事・報酬運営と、部門を超えた育成や一体感の醸成とのバランス(一般論としては、ジョブ型的運用を追求するほど部門間の整合性や部門を超えた異動の実施は困難になる)は潜在的な課題として挙げられます。
当社は、完全にジョブ型移行というよりも、メンバーシップ型の良い面もとりいれる、ハイブリッドを指向しております。
また、マネージャーがメンバーのキャリアをプロデュースするという役割を求められており、組織全体で個人のキャリア自律を支援する仕組みも整っており、モチベーションが高ければ、高いパフォーマンスを発揮していける環境を用意しています。
そして、その社員を適正に評価し、ペイ・フォー・パフォーマンスを徹底することで、モチベーションの低いローパフォーマーの発生自体は、ある程度抑制されていると考えます。
人事制度について
報酬について
また採用時の報酬決定はHRBPがアドバイスをした上で、部門が行います。
マネージャー教育について
理解浸透という点では、社内の人事担当役員のメッセージと社外講師からの講義を組み合わせることで、社内外の観点からマインドセットを行ったことが挙げられます。
工夫した点としては、研修後にキャリア1on1等の機会を通じて学んだことを実践してもらい、そこから得た気づきを言語化するまでを一連の流れとして実施したことです。
受講したマネージャーからは「キャリア自律は組織の生産性と競争力を高める原動力になる」「日頃からメンバーの多様な強みを活かした組織運営を行っていきたい」といった声がありました。
リテンションについて
優秀な人材を採用、育成、評価、登用のサイクルを繰り返すとともに、その人材が高いパフォーマンスを発揮できる環境、エンゲージメントを高い水準に維持できる環境を提供し続ける必要があると考えています。そのために、DEI、多様な働き方、ウェルビーイングの実現に向けた継続的な取り組みにも注力しております。