有価証券運用における外部リソースの活用  

『ニュー・プロップ』(2025年5月号 掲載)

国内金融市場を取り巻く環境は、転換期を迎えている。低金利環境が長らく続いていたが、日本銀行による金融政策の正常化の動きから「金利のある世界」へと回帰している。国内金利水準の上昇は、今後の長期的な資産運用環境にとってポジティブである一方、内外債券がタイミングをずらしながら金利上昇した結果、国内金融機関においては債券投資が大きな含み損を抱える状況となった。 

為替ヘッジコストを鑑みると、内外金利の絶対水準はいずれも高いとは言えず、それに加えて引き続き金利上昇リスクは国内外ともに燻っている。それを踏まえると、金利リスクを抑制しながら相対的に高い利回りをあげる可能性のあるプライベート資産やヘッジファンドなどのオルタナティブ資産への投資にかかる期待は高いと考えられる。 

一方で、これら資産クラスへのアクセスには、複雑な資産特性や優良マネジャーへのコンタクトの難しさなどから内部リソースだけでは十分にカバーし切れないという懸念も挙げられる。そのため、大手機関投資家を中心にゲートキーパーを活用し、足りない内部リソースを補おうとする動きが見られるが、ゲートキーパーの活用に消極的な投資家も存在する。ゲートキーパーの活用にあたっては、追加コストが発生し得るが、投資判断の多くはゲートキーパーに委ねられるため、社内でのノウハウの蓄積が十分ではないことが、導入の障壁になっているのではないだろうか。 

そのような場合、対策の一つとして、ゲートキーパーではなくアドバイザーを活用する方法も考えられる。一般的に、OCIO(アウトソースド・チーフ・インベストメント・オフィサー)プロバイダーは、投資計画の立案からポートフォリオ構築、モニタリングまで幅広く対応している。ゲートキーパーのように運用商品の選定を直接行うケースもあれば、投資家が自ら投資を実施するためのシステムやインフラの支援、さらには外部スタッフとしての知見提供を通じて、アドバイザーとして投資家の内部知見の蓄積を支援することもある。外部リソースの活用法を検討する際は、完全にアウトソースしたい分野と投資家自身が知見を高めたい分野を明確に特定し、それに適した外部リソースを活用することで、限られた内部リソースを最適に配分することが可能になる。 

著者
木下 智雄

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