株式アクティブファンド評価の再考
『オルイン』(2024年夏号 掲載)
アクティブファンドは、採用から3~5年で運用実績等を評価し、継続か入替えかを検討することが一般的である。その際、「過去3年の運用実績がベンチマークを下回った場合は解約」等の機械的なルールのみに基づき実施するケースが見られる。
2023年度末で上記ルールのもと評価した場合、多くのファンドがこれに抵触し、入替えの対象となった可能性が高い。特にこの期間は、特定の大型銘柄の上昇が顕著で、業種やスタイル別の格差も大きく、アクティブファンドにとっては難しい運用環境だった。加えて、近年の地政学リスクの高まりやインフレ進行などを背景に市場は転換期を迎え、目まぐるしく変化してきた。このような環境下では、活躍する銘柄が入れ替わり、ファンドの評価期間が一時的な成績不振の時期と重なることも珍しくない。今後も市場環境の変化が想定される中、特定の期間の運用実績だけでファンドを評価する運営は、ファンド評価としては不十分である可能性が高い。ゆえに、運用実績でだけではない、より多面的な観点からの総合評価が重要である点を改めて強調したい。ファンド評価にあたり重要と考える観点を以下3点挙げる。
- 将来の超過収益の獲得可能性(定性評価)を重視
運用哲学・プロセス、運用体制等の定性情報に基づく評価。マーサーでは、ファンド・マネジャー等へ継続的に取材を行い、業界内で比較することにより確信を深めていく(過去実績は取材のための基礎情報)
- 運用実績の補完的な分析の必要性
特に評価期間が特異な市場環境であった場合、ファンド特性を考慮した評価(活躍が期待される局面での力の発揮状況の確認や、同種ファンドとの比較)が必要
- 投資家が求める期待役割からの評価
投資家の株式ポートフォリオにおける位置づけや役割(他の採用ファンドとの分散や補完等)を整理し、その期待役割を果たせたかを評価
アクティブファンド評価が適切になされないと、パッシブファンドへの回帰が議論されがちである。本来、株式アクティブファンドには、企業に対する適切な資金供給を通じ、市場における企業の淘汰を促す過程で市場全体の価値を増大させることや、市場参加者の様々な見通しに基づく株式の売買により適正な株価形成を促すことで、市場の効率化を図っていく機能がある点で存在意義を持つ。株式市場における銘柄間格差は今後も拡大し、アクティファンドに活躍機会をもたらすと期待されることから、投資家が適切な評価を実施し、有効に活用していくことを願う。
著者
岸田 理恵
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