機動性の時代:2024年以降の投資テーマと投資機会  

07 1月 2024

非常に複雑で変化する世界で、投資家は社会経済的なスーパーサイクルやシステミックなメガトレンドの中、レジームチェンジ(市場の構造変化)という課題に直面しています。

世界市場、経済、社会が長期的な激変に見舞われ、私たちの住む世界が再構築されつつあります。具体的には、金融政策の正常化、紛争リスクの増大、よりクリーンな技術や産業プロセスへの無秩序な移行、生成AIの急速な社会化などが挙げられるでしょう。

昨年の『投資テーマと投資機会』では、デジャ・ニュー私たちが直面した経験や課題の一部は、インフレの変動、紛争、持続可能性の問題を特徴とする1970年代のものと匹敵するものでした。投資家の意思決定を強固なものとし、長期的な目標を達成するための将来のポジショニングを導くために、この時期から得られる教訓を特定しました。

過去12ヶ月は、世界経済の脆弱性をさらに浮き彫りにし、他のテーマ(例えば、自然環境や人工知能)を際立たせています。投資家は、金利上昇や自然環境関連リスク、その他の新たなテーマによってもたらされる機会に急速に注目し始めました。このように変化が早く、投資機会の獲得に対する意識が非常に高い時代には、たちまちその機会を逃してしまう可能性があります。投資家はこれらのチャンスを生かすために柔軟なアプローチをとる必要があります。今日、投資家が意思決定を行う際の基盤として、機動性が求められる時代に入っています。

このような環境では、市場を牽引する主要トレンドを理解することが極めて重要です。そのためには、投資家が投資の意思決定プロセスを市場環境に適用させることが最善だと考えています。こうした枠組みはどうあるべきか、また、こうしたパラダイムを通じて、投資家は2024年以降の投資機会と落とし穴をどう評価すべきかを明らかにします。 

2024年における3つの投資テーマと投資機会

この新しい環境を理解するために、私たちは3つのテーマに分類しました。すなわち、レジームチェンジ(オープンエンドなパラダイムシフト)、スーパーサイクル(複数の市場サイクルよりも長期化すると予想される)、メガトレンド(徐々にではあるが着実に実現する数十年にわたる移行)です。

地政学的リスク、インフレの変動、移行(ESG)リスクの高まりはすべて、ボラティリティ、分散、混乱が大きくなることを示唆しています。このような状況は、ヘッジファンドなどの動的なアルファを創出するマネージャーにとって、またプライベートデットなどの従来の資金の貸し手が去ったスペースに入り込むことができる戦略にとって、機が熟している状態を示唆しています。金利上昇と相まって、ヘッジファンドはこの10年間では、より高いリターンの獲得が期待できるようになると考えます。過去10年間、一方向の流動性が原動力となった株式市場での競争に苦戦した業界にとっては歓迎すべきニュースです。

中国に関連するセンチメントが急激に弱まっていることは、最近の米国市場の強さとは対照的です。マーサーは引き続き、投資家の中国と新興国に対するベースアロケーションが少なくともベンチマークウェイト並みであることを推奨しています。(本稿の執筆時点で)実際にリスクが織り込まれている範囲では、このネガティブなセンチメントは逆張り投資の機会をもたらす可能性があります。

金利はピークに達していたかもしれませんが、2010年代の超低金利に戻る可能性は低いようです。この変化は、現在マルチアセット・ポートフォリオ構築における債券の価値が明らかに高まっていることを意味します。定期的な戦略的資産配分の見直しを行っていない投資家は、次回の見直しを早めるのが賢明でしょう。しかし、債券のディフェンシブな役割(株式下落時の下支え等)が過去10年間と同様に強力になると仮定することはそれほど賢明ではありません。株式と債券が逆相関である期間に自動的に戻っていく保証はないためです。 

金利上昇の影響により、循環的なインフレ圧力は沈静しつつありますが、多くの重要な構造的インフレ圧力が依然として残っています。保護主義の高まり、サプライチェーンの圧力、長期的なエネルギー転換の必要性は、インフレリスクを増加させる方向に働きます。さらに、パンデミック時の財政政策と金融政策の取組の調整は、より引締め的な金融スタンスと、支持票獲得に熱心な政府による緩和的な財政支援の継続との間の緊張関係へと発展する可能性があります。 

サービス面においては、最大のデフレ要因はAIである可能性が高いでしょう。2023年は間違いなくAIの時代が到来した年であり、AIを実現すると見なされた銘柄が世界の株式市場のリターンを完全に支配しました。 これら2つの相反する力の間の力関係により、インフレ率が目標に近いか、目標に近い状態が妥当な長さで続く、もしくは、市場にショックが起こり、長期的な平均水準がわずかに高くなるパターンが考えられます。

今日の高金利は、市場に多額の債務を抱えるプレーヤーの脆弱性を再び浮き彫りにしています。借り手から貸し手へと権力をシフトさせました。このような環境では、プライベート・デットは非常に魅力的な投資対象であり、資金を必要とする経済に流動性を提供するとともに、投資家には高いリスク調整後リターンを提供しています。

エネルギー供給の混乱は、短期的な石油とガスの供給だけでなく、長期的な自国における再生可能エネルギーなどのエネルギー安全保障の必要性を明確に強調しました。 すなわち、重工業セクター(鉄鋼、セメント、化学品)、大型輸送セクター(トラック輸送、船舶輸送、航空輸送)などが移行(ESG)の次世代の流れをおこすためには、イノベーションが鍵となります。

大規模な電化を実現するために必要な輸送とインフラ構築の不可欠な要素である重要な鉱物の役割は、今日ではより広く認識されており、最近の保護主義政策の特徴です。しかし、本稿執筆時点では、市場価格は予想される需要を十分に反映していません。イノベーションと規制の段階的な変化は、時間の経過とともに需要構造に影響を与えるため、積極的な管理が不可欠です。 

市場を牽引する主要トレンドを理解することは、投資家にとって極めて重要です。そのためには、投資家が投資の意思決定プロセスを市場環境に適用させることが最善だと考えています
Jo Holden

Global Head of Investment Research and Consulting

機動性の時代

2024年以降に投資家を成功に導く3つの主要テーマについて、詳細をご覧ください。 
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