インフレからの保護をポートフォリオに組み込むには、多くの資産クラスと戦略に幅広く分散投資する必要があります。
コロナパンデミック下に前例のないレベルの金融緩和政策を実施した結果、現在急激なインフレが急速に進行しています。加えて、エネルギーや食品価格の高騰、サプライチェーンの長期的な混乱、そして地政学上の大きな出来事によってさらに悪化しています。このような短期的な要因だけでなく、以下のような構造的な要因によって、長期的なインフレリスクが高まっていると考えています。
ポートフォリオ構築には、高まるインフレリスクを考慮する必要があります。株式と債券で構成される伝統的なポートフォリオは、過去10年間のディスインフレの成長、そして株式と債券の逆相関という穏やかな環境の中で、非常に好調でした。しかし、インフレ率が持続的に上昇し、より不安定になる環境では、さまざまなインフレシナリオに対応した積極的な運用を行わなければ、こうしたポートフォリオが毀損する可能性があります。
インフレの行方を左右する要因
ディスインフレ圧力の推進要因
インフレ圧力の推進要因
従来型ポートフォリオに対するインフレの影響
多くのポートフォリオは、ディスインフレ環境下で、またそういった環境を想定して構築されています。株式や債券、またプライベートエクイティ、不動産、積極的なクレジット志向の債券戦略などのオルタナティブ資産クラスが中心のポートフォリオを構築しており、過去20年間にわたって堅調なパフォーマンスでした。利回り低下傾向により、配当金やクーポン払いの価値の目減りもさらなる追い風となりました。
構造的にインフレ率が高い環境では、この方程式が変わります。まず第一に、ポートフォリオはインフレによる実質リターンの低下に対してより良いポジションを取り、インフレに対応する資産クラスへの十分なエクスポージャーを持つ必要があります。第二にポートフォリオは、景気後退期とインフレなき成長環境の移行が繰り返されることを想定したポジション(チャートの一番下)だけでなく、インフレ局面を想定したポジションも加える必要があります(チャートの一番上)。
図2
構造的なインフレ率の上昇は、インフレの直接的な影響からポートフォリオを保護するだけでなく、ポートフォリオ構築にも影響を及ぼします。
ポートフォリオにおける分散は、ディスインフレの時代、特に最も必要とされる大きなストレスイベントにおいて、株式と債券の間の典型的な逆相関性によって支えられていました。その理由は何だったのでしょうか? インフレ率は構造的に低く、循環的なものであるため、インフレ率の上昇は経済成長につながります。これは、中央銀行が先手を打って金融引き締め政策を実施することから、国債の価格は低下する一方、株式は上昇するためです(その逆もまたしかりです)。つまり、ポートフォリオの一部である株式が上昇すると、他の部分である債券は下落したのです。
しかし、インフレ率が構造的に高い環境において、インフレ率の上昇と金融引き締めはもはや経済成長と必ずしも関連していないため、株式と債券の両方が同時に下落することになります。ポートフォリオにおける分散投資は難しくなり、それによりポートフォリオ構築の複雑さも増します。アセットアロケーターは、ポートフォリオにダウンサイドプロテクションを組み込むために、一層工夫を施す必要があります。
インフレ連動債に投資することでインフレ対策を行うポートフォリオもあります。しかし、これにも限界があり、今後直面する可能性のある幅広いインフレシナリオに対して包括的にヘッジしているポートフォリオにはなっていません。
価格の方向性をどう見極めるか
シナリオ分析は、レジームシフト(具体的には高インフレレジームへの移行)の確率が高まっているこのような時期に、特に有効です。歴史的に、長期的インフレとディスインフレの間で、レジームが頻繁にシフトしてきました。
これは、健全なディスインフレ環境に回帰する可能性があるものの、将来のインフレレジームが過去40年とは実質的に異なるということを認識せざるを得ないと言えます。
図3は、異なる条件下において経済や市場がどのように振る舞うかについて、複数のシナリオを考察しています。これらは、3年間のフォワードルッキングな評価です。インフレとディスインフレ、コストプッシュ型のインフレとディマンドプル型のインフレ、強い成長と弱い成長、中央銀行と政府の政策の影響などを考慮した上で、それぞれの状況を説明します。
マーサーのインフレ対策 — 強固なポートフォリオの構築に関するレポートは、3年間の投資期間で複数のシナリオを想定した場合、異なる戦略がどのようなパフォーマンスを示すかについて、より詳しく解説しています。
お客様の資産をインフレから守る戦略を定義する
これらすべてのインフレシナリオから最も適切に資産を守れるような、単一の戦略は存在しません。つまり、ポートフォリオに広範なインフレ対策を組みいれるには、資産クラスと戦略の多様な組み合わせが必要です。
洗練された機関投資家向けポートフォリオの多くは、インフラや不動産など、成長志向や長期的なインフレシナリオに対応する資産がすでに組み込まれており、それらをコモディティ志向の戦略で補完することができます。その他のインフレシナリオ、特にスタグフレーションに対しては、ほとんどのポートフォリオが脆弱な状況です。ここでは、コモディティ志向の戦略や金が、ポートフォリオへ貴重な価値を与えることがあります。
2022年に経験したような積極的な政策金利引き上げによりインフレに対応するシナリオでは、ポートフォリオがデュレーションリスクにさらされ脆弱なままとなります。これらはまず、従来のダウンサイド・プロテクションを見直すことを思い出させるものですが、同時に、ポートフォリオにおける変動金利型債券資産の潜在的な利点を浮き彫りにするものでもあります。
最終的に、投資家に適した資産構成は、投資家固有の制約条件を含む様々な要因によって決まります。たとえば、投資家の既存の資産構成や投資ホライズン、ポートフォリオが最も脆弱になるシナリオ、気候変動リスクに対する感応度やESGへの配慮などがそれにあたります。
インフレから資産を守る戦略の指針となる質問
- 株式や実物資産など、既存ポートフォリオで保有しているインフレ感応度の高い資産は何ですか?
- これらのインフレ感度の高い資産は、どのような時間軸でプロテクションを発揮しますか?
- ポートフォリオが最も脆弱な経済シナリオはどれですか?
- 必要なインフレ対策の種類は?それは一般的なCPIまたは特定の種類の対策(教育、医療)?
- 流動性資産と、ロックアップ期間の長いプライベート資産への投資許容額に与える影響とは?
- ガバナンス、ひいては戦略の複雑さやモニタリングに対する許容度は?
- 環境・社会・ガバナンス(ESG)、非財務的要素を考慮することへの重要性は?
インフレリスクを見直す際に考慮すべき3つのポイント
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インフレと一言で言っても、すべてが均質な現象ではないそれはさまざまな形で現れ、さまざまなシナリオがもたらすリスクは時間とともに変化していきます。
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特効薬的な対応策はないさまざまな資産にまたがり分散投資することは、より現実的な解決策となります。
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伝統的のポートフォリオ株式と債券が中心のポートフォリオはインフレには適していない。
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