2025年の経済と市場の見通し  

660492994 Milo Zanecchia/ Ascent Xmedia GmbH

上り坂の後の下り坂 ─ 2025年に投資家が考えるべきこと

2023年は経済が大きな弾力性を指した年として経済史の教科書に刻まれることになるでしょう。実際に、高金利、銀行融資基準の厳格化、製造業の減速など、数多くの逆風が吹いたにもかかわらず、世界経済は相応のペースで拡大し続けました。 

消費は、力強い所得の伸び、貯蓄の取り崩し、あるいはインフレ率の低下によって支えられました。一部の地域では、⺠間投資の増 加や大規模な財政刺激策も見られました。世界の製造業は苦戦したものの、サービス業はパンデミック後の需要がモノからサービスに移っていることの恩恵を受けて好調を維持しました。

世界経済の成長率は決して一様ではなく、米国が突出して好調だった一方、中国経済は苦戦しました。2024年に入ると、これまでの政府による財政支援の影響が薄れたり、あるいは完全に消滅するにつれて、⽶国をはじめとして景気が過熱気味であった国では、今後は景気の冷え込みに直面すると予想されます。

成長

多くの先進国では過去に実施された⾦融引締め政策が時間差を置いて実体経済に影響を与え、短期的には経済成⻑が鈍化する可能性があります。しかし、当社は景気後退のリスクが⾼いと考えているわけではなく、⽶国の景気は依然として底堅いものの、先進国経済が2024 年末から2025年にかけて⻑期的なトレンドを下回るペースで成⻑を続けることを予想しています。 健全な家計と企業のバランスシート、および利下げへの転換は、過去に⾏われた利上げの影響を部分的に相殺するはずです。⼀⽅、現在の⾦利緩和は2025年下半期の好調な成⻑の基盤を築くことになるでしょう。⽶国⼤統領選の結果を受け、2025年の成⻑⾒通しはやや複雑になりましたが、実際には、ベースシナリオに対するリスクとして、当社の⾒解に影響を与える可能性があります。 

規制の緩和と財政政策の緩みから、成⻑に対する上振れリスクが⽣じえます。⼀⽅、経済成⻑の下振れリスクは関税政策から⽣じる可能性が⾼く、関税の引き上げは経済成⻑を阻害し、ビジネスを混乱させます。⽇本経済はおそらく好調に推移するでしょう。⽇本は過去30年間とは根本的に異なる経済環境に⼊っており、従前は0.5%程度であった名⽬GDP成⻑率は今後、平均して3%程度で推移すると予想されます。実質賃⾦の上昇率がプラスに転じており、所得の増加が消費を押し上げるはずです。⽇銀は⾦融政策を徐々に引き締め始めていますが、2025年の⼤半は⾦利が低⽔準で推移すると⾒込まれており、これが引き続き経済成⻑を下⽀えするでしょう。なお、2024年にいくつかの主要な⾃動⾞⼯場の操業停⽌が⽣産と出荷に影響を与え、耐久財の消費と輸出が減少しました。これらの⾃動⾞⼯場の操業が再開されれば、GDP成⻑率も反発することが予想されます。ユーロ圏では短期的には経済成⻑の回復を促す要因はほとんど⾒当たりません。しかし、貯蓄率は上昇しており、インフレが落ち着き、欧州中央銀⾏が⾦利を引き下げることで、消費者は再び⽀出を始める可能性があります。 

2025年に向けて、⾦融緩和は経済成⻑を押し上げるでしょう。この影響は、変動⾦利型住宅ローンの割合が⾼い⽶国以外の国々、特にユーロ圏、英国、オーストラリアでは、⾦融政策の効果がより迅速に現れるはずです。⽶国では、近年、⾦利上昇により住宅部⾨が苦戦を強いられており、供給と需要の両⽅が抑制されていますが、⾦利が引き下がれば、この分野の活動を活発化させるはずです。。これは、⾦利が低下することでディベロッパーの資⾦調達コストが低下し、住宅の供給を増加させるためです。また、⾦利の低下は新たな買い⼿を市場に呼び込み、需要を増加させます。 

中国の成⻑⾒通しは依然として不透明です。⼀⽅で、中国は電気⾃動⾞やソーラーパネルなどのニューエコノミー技術の世界最⼤の⽣産国であり、より⾼度な製造業、⼯業⽣産、輸出に重点を置いています。しかしながら、中国は不動産セクターの継続的な問題や労働市場の弱さによって、消費者の信頼感と⽀出が低迷を続けています。なお、中国政府は年間の成⻑率⽬標を達成することに全⼒で取り組むことを明⾔しています。2024年9⽉までは政策的な⽀援が⼗分ではなく、また経済の供給側を強化することに過度に焦点が当てられていました。しかし、その後発表された新たな景気刺激策や政府関係者の発⾔は、景気の回復および様々な課題の解決に向けて中国当局が真剣に取り組んでいることを⽰唆しており、今後、中国経済の輸出への依存度が低下するはずです。中国経済が持続可能な回復を遂げるためには、消費者の信頼感を⾼め、苦境にある不動産セクターを安定させることに景気刺激策の照準を合わせるべきであると当社は考えています。重要な点としては、トランプ次期⼤統領が⽰唆する関税政策は中国に対する交渉戦術に過ぎない可能性があります。。しかし、もしそれが実施されれば、中国の輸出および実質GDPに対して明確にマイナスの影響を与えることとなります。そのような場合、景気を下⽀えするためにさらなる⾦融緩和や財政拡張を⾏い、また為替レートにおいて⼈⺠元安に誘導することを中国政府に求める声が中国国内で強まるでしょう。

中国経済の⾒通しについては不確実性が強く、今後の景気刺激策に依拠していますが、その他の新興国経済の⾒通しについては当社はより前向きな⾒⽅をしています。全体的には、これらの新興国では国内および先進国におけるさらなる⾦融緩和と良好なマクロ経済環境(インフレの安定と消費者信頼感の改善)が経済成⻑を⽀える要因となっています。⼀⽅で、トランプ次期⼤統領の関税政策では中国以外の国々についても、程度の差はあるものの、関税引き上げの対象となっており、これによって新興国通貨に対して⽶ドルが全般的に上昇する場合には多くの新興国にとって逆⾵となります。

しかし、アジアの新興国、特に製造業のバリューチェーンの上位に位置する台湾や韓国は、半導体や⾼付加価値の電⼦機器など他国で⽣産を代替することが難しい製品の輸出需要は⼤きな影響を受けず、⼯業⽣産は拡⼤を続けるはずです。。インドは堅調な経済成⻑を遂げており、今後数⼗年とはいかなくとも、今後数年間は資本を引き寄せる状態が続くでしょう。中南⽶諸国の経済は、資源や製造業などの景気感応度の⾼いセクターに依存しており、先進国経済の成⻑鈍化や中国経済の不確実性に対してより脆弱です。中南⽶諸国の経済は、資源や製造業などの景気感応度の⾼いセクターに依存しており、先進国経済の成⻑鈍化や中国経済の不確実性に対してより脆弱です。しかしながら、⾦属資源の主要な原産国であるブラジルやチリは、銅やリチウムなどの⾦属が電気⾃動⾞や太陽光発電技術において重要な役割を果たすため、エネルギー転換からの追い⾵を引き続き享受するでしょう。最後に、⼀般的な議論として、中国を除く新興国は⽶国企業が製造拠点を中国から移転することによって幅広い恩恵を受けるはずです。特に、⽶国が中国製品に対する関税を60%まで引き上げる場合には、その他の新興国の経済成⻑にはプラスに働くでしょう。

インフレ    

2024年の前半は特に⽶国においてインフレ指標の上振れが散⾒されましたが、時間の経過とともにインフレの抑制が改めて確認されました。当社は複数の理由から2025年にインフレ環境が引き続き正常化に向かうと予想しています。⼀点⽬の重要な点として、失業率が上昇し、求⼈が減少することで労働市場の需給が緩んでいることがあります。現在の賃⾦上昇率は⾼い⽔準にとどまっていますが、労働市場の過熱感が解消されることで賃⾦の上昇ペースが鈍化し、サービス価格のインフレ率が低下すると当社は予想しています。⼆点⽬に、⽶国のインフレ統計において家賃の上昇率がさらに低下すると当社は予想しています。これは、⺠間のデータにおいて賃料の上昇率が低下していることが確認されているためです。 三点⽬に、先進国では2024年の年初、前年の⾼い総合インフレ率に呼応して⼀部の品⽬の価格が⼤きく上昇しましたが、2024年は総合インフレ率が⼤幅に低下しているため、 2025年は同様の上振れは少ないものと予想されます。

⽶国のインフレを左右するのは、関税の引き上げと財政⾚字の拡⼤です。。これらの関税が実際にどの程度の規模で実施されるのか、それとも単なる交渉⼿段なのかはまだ分かりません。いずれにせよ、関税の引き上げや財政⾚字の拡⼤は短期的にインフレを引き起こす要因となりますが、必ずしも⻑期的にインフレ圧⼒が残存するわけではありません。したがって、インフレ期待が安定している限り、⽶国のインフレ率は中央銀⾏の⽬標⽔準に戻っていくはずです。

⽇本で⾒られているインフレ率の上昇は単なる⼀時的な現象ではないと当社は考えています。⽇本の現状は、平均インフレ率がほぼ0%だった時代とはかけ離れているように感じられます。2024年8⽉までの1年間のコアCPIの上昇率は前年⽐で平均+2.8%3でした。さらに重要なのは、インフレは、単発的な要因や外部からのショックではなく、賃⾦上昇などのより持続的な基礎的な価格上昇圧⼒によって主に引き起こされているということです。2025年は再び春闘の賃⾦交渉に注⽬が集まります。2024年はこれらの賃⾦交渉は重要な結果をもたらし、春闘賃上げ率は30年ぶりの⾼⽔準となりました。インフレ期待が⾼い⽔準で安定し、物価が基調的に上昇するには賃⾦の上昇率が引き続き⾼⽔準で推移する必要がありますが、労働組合が公表した2025年の賃上げに関する基本構想はこのような賃⾦の上昇が2025年も実現される可能性が⾼いことを⽰唆しています。当社は、堅調な名⽬GDP成⻑率、構造的な労働市場の逼迫、そしてインフレに対する消費者⾏動の変化により、2025年についても賃⾦の上昇率が⾼⽔準で保たれると予想しています

中国は世界の多くの国とは異なる状況に直⾯しています。デフレの瀬⼾際にある中国の課題は、1990年代後半に⽇本が直⾯した問題を彷彿させます。コア・インフレ率は数四半期にわたり低下傾向にあり、0%に近づいています。現在、不動産セクターの問題、慢性的に⾼い貯蓄⽔準、弱い国内消費、そして多くの地⽅政府における⾼い債務⽐率(対GDP)を考慮すると、慢性的な低インフレもしくはデフレのスパイラルに陥るリスクがあります。しかし、1990年代の⽇本はこのような問題に対処するための情報を持っていませんでしたが、今の中国は過去の⽇本の経験を参考にすることができます。中国が⽇本のデフレ時代から学べることがあるとすれば、それは当局が対応が遅れてはいけないということです。中国当局が迅速に⾏動するかどうかという点については予測することが困難ですが、これまでに導⼊された景気刺激策は正しい⽅向への⼀歩です。 

中国を除く新興国ではインフレ率は過去2年間で⼤幅に低下しました。概して、⾦融引き締め策の遅⾏効果と中国におけるインフレ率の低下により、新興国市場やその他の地域の輸⼊価格が低下し、2025年にはインフレが正常化すると当社は⾒ています。

中央銀行の政策

多くの先進国では、インフレリスクが後退する中、中央銀⾏は⾦利を中⽴的な⽔準6に戻すために利下げを⾏っています。債券市場は積極的な利下げサイクルを織り込んでいましたが、特に⽶国では過度な利下げ期待が後退しています。当社は、中央銀⾏が⾦融緩和をより慎重に進める可能性が⾼いと考えており、特に2025年は徐々にその傾向が強まるのではと考えています。そして、⽇本を除く先進国の中央銀⾏が2025年末までに⾦利を中⽴的な⽔準まで引き下げると予想しています。。しかし、景気が予想よりも弱い場合、FRB や他の中央銀⾏が中⽴を下回る⽔準まで⾦利引き下げを⾏うシナリオも考えられます。このシナリオは経済成⻑が鈍化しているユーロ圏、ニュージーランド、スイスで⽣じやすいと当社は考えています。FRBは、関税など実際に実現しない可能性のある政策を先取りすることを避けたいと考えているため、より困難な課題に直⾯するかもしれません。しかし、インフレ圧⼒の⾼まりは、2025年以降の⾦利上昇へとつながる可能性があります。

中国に関しては、デフレと低成⻑のリスクに直⾯する中、特に⽶国による⼤幅な関税引き上げの脅威が⾼まったり、あるいは現実のものとなる場合には、中国政府はさらなる景気刺激策を実施する必要があると当社は考えています。しかし、⾦融緩和政策は限界に近づいている可能性があり、不動産市場が抱える過剰在庫の問題を解消するため、不動産需要を増加させることを⽬的とした施策が今後の景気刺激策に含まれるかもしれません。不動産需要を増加させることを⽬的とした施策が今後の景気刺激策に含まれるかもしれません。。これまでに実施された不動産セクターを対象とした景気刺激策は効果や勢いを⽋いており、また柔軟性にも乏しいため、不動産セクターに与える影響は限定的でした。不動産セクターの問題を確実に解決し、消費者の信頼感を回復させ、より強い消費に導くためには強⼒な政策的措置が必要です。

中国を除く新興国の中央銀⾏は、2024年下半期に⽶ドルに対して⾃国通貨が過度に切り下げられることへの懸念から⼀時的に利下げを停⽌したものの、2024年下半期に⽶ドルに対して⾃国通貨が過度に切り下げられることへの懸念から⼀時的に利下げを停⽌したものの、2025年には利下げを継続する可能性が⾼いと当社は考えています。先進国が⾦利を引き下げることで、新興国通貨の下落圧⼒が緩和され、新興国の中央銀⾏が⾦融政策をさらに正常化することが可能になるはずです。もちろん、すべての新興国が同じ状況にあるわけではなく、⼀部の国は固有の要因により利上げを⾏う必要があるかもしれませんが、それが新興国全体に広がるとは当社は考えていません。

2025年も日銀は緩やかなペースで利上げを継続すると予想しており、インフレ率は日銀の2%目標を上回る水準で推移すると私たちは見ています。金利は依然として非常に低い水準にあります。当社は、2025年に⽇本銀⾏が緩やかなペースで利上げを継続すると予想しています。⽇本では依然として⾦利⽔準が⾮常に低いため、インフレ率は⽇本銀⾏が⽬標とする2%を上回る可能性が⾼く、2025 年には⽇本銀⾏が想定している中⽴的な⾦利⽔準の下限である1% まで利上げを⾏うことを当社は予想しており これは概ね6か⽉毎に利上げが実施されることを意味します。しかし、経済統計において持続的なインフレ圧⼒が確認される場合、⽇本銀⾏はより積極的な姿勢に転じ、1%を⼤きく超える⽔準まで⾦利を引き上げる可能性があります。結局のところ、⽇本のマクロ経済環境が良好であること、またインフレ率が⽇本銀⾏の⽬標⽔準を上回っていることは、⼤幅な⾦利引き上げが必要であることを⽰唆してます。これは、厳しい⾦融引締めが既に⾏われ、今後は利下げが予想される他の先進国とは対照的です。

リスク

⽶国の⼤統領選でトランプ⽒が勝利し、経済成⻑とインレの上振れリスクと下振れリスクの両⽅が⼤きく増加しました。トランプ⽒が提案しているいくつかの政策は現政権の政策を決定的に転換するものであり、その中には財政⽀出の拡⼤や規制緩和などがあります。それらの中でも特に極端なものは関税政策で、中国からの輸⼊品に60%以上の関税を課すことを提案しており、また、中国以外の国についてはすべての輸⼊品に対して10%の関税を課す可能性もあります。これらの関税引き上げが実際に実施されるのか、それとも、⽶国にとってより良い貿易協定を締結するための交渉戦術なのかはまだ分かりません。しかし、もし実施されることになれば、これらは2018年および2019年に実施された関税引き上げをはるかに上回る、100年以上ぶりの⼤幅な関税引き上げとなるでしょう。

2025年の主なリスクの⼀つは⾦融引締めの遅効性を過⼩評価していることであると当社は考えており、このことがいくつかの国で景気後退を引き起こす可能性があります。これまでで最も積極的な利上げサイクルの⼀つに直⾯しても、景気は驚くほどの耐性を⽰してきました。⽶国では、⻑期固定⾦利の住宅ローンの普及や、新しい情報技術への⼒強い投資需要など、⾦融引締め政策の実体経済への伝達が鈍い理由を説明する要因が存在します。 

より楽観的な観点からは、⼈⼯知能(AI)やその他の新しい情報技術が、世界の多くの地域で⽣産性の向上を促進する可能性があります。⽣産性向上に対するAIの潜在能⼒については様々な推計が⾏われており、それらの推計結果は最⼩限のものから⾮常に⼤きなものまで幅広く分布しています。当社は、AIが⼤幅な⽣産性向上をもたらし、今後数年間の経済成⻑に⼤きな影響を与える可能性が⾼く、これは2025年以降の経済成⻑の上振れリスクを⽰唆していると考えています。また、将来的に⽣産性の向上や⾃動化の推進によって賃⾦に下押し圧⼒がかかるため、AIは今後数年間にわたってインフレの抑制をもたらす可能性もあります。

当社の中国に関する⾒⽅は、中国政府が最終的に経済成⻑を下⽀えし、デフレ・リスクを解決するだろうという考えに基づいています。しかし、これらのタイミングは依然として不透明です。過去数年は中国政府の政策決定は必ずしも透明ではなく、また典型的な経済政策のパターンに則したものでもないことを⽰しており、政府は短期的な経済成⻑よりも、戦略的かつ⻑期的な政治的および経済的な⽬標を優先しているように⾒受けられます。

世界中の多くの武⼒衝突も経済や市場にリスクをもたらしています。⽶国の⼤統領交代後に、地政学的なイベントがどのように展開するかはまだ分かりません。トランプ次期⼤統領が迅速な解決を優先し、世界的に地政学的リスクが低下する可能性もあります。地政学的なイベントを予測することは概して⾮常に難しいと⾔えますが、現時点では地政学的なイベントが⾦融市場に与えるリスクは抑制されていると当社は考えています。これらのイベントが発⽣する際には⾦融市場のボラティリティが上昇しますが、その影響は時間とともに解消される傾向があります。

資産配分

2025年のマクロ経済環境は株式にとってプラスとマイナスの要因が混在しています。経済成⻑がやや鈍化することが予想されますが、先進国と新興国のいずれにおいても企業収益は全般的に⼒強く成⻑することが⾒込まれます。⽶国では法⼈税引き下げが企業収益の上⽅修正につながる可能性があります。当社は、AIによって⽣産性が向上し、企業の収益性を⾼められる可能性があると⾒ています。また、インフレ率や⾦利の低下も株式市場の⽀援材料となるでしょう。しかし、株式にとって全てがプラス材料というわけではありません。バリュエーションが⾼い⽔準に達していることを考慮に⼊れると過度に楽観的な⾒⽅には注意が必要です。また、関税の引き上げが⽶国企業の競争⼒を低下させ、より広範で深刻な貿易戦争を引き起こす可能性があります。しかしながら、当社はより幅広い株式市場の中には魅⼒的な投資機会が存在すると考えています。 

⽇本株は設備投資の増加などによる名⽬GDP成⻑率の構造的な回復から恩恵を受けることが期待されます。P成⻑率の構造的な回復から恩恵を受けることが期待されます。 REITのファンダメンタルズは堅調ですが、REITの指数構成に関する誤解によって過度に投資家から敬遠されています。新興国株式のバリュエーションとマクロ経済環境は魅⼒的ですが、⽶国の関税政策によっては新興国経済に対する投資家センチメントが悪化し、株価に影響を与える可能性があります。このため、当社は貿易政策の全貌が明らかになるまでは新興国株式に対して中⽴的な⾒⽅をしています。

デフォルト率が抑制されていることは世界的にハイイールド債の⽀援材料となっており、利回りを重視する投資家はリスク許容度を引き上げ、ハイイールド債への投資を拡⼤する可能性があります。しかし、グローバル・ハイイールド債は既にクレジット・スプレッドがタイトな⽔準にまで縮⼩しており、魅⼒的な投資機会とは⾔えません。 

当社は、グロース債券の中では引き続きフロンティア市場債とアジア・ハイイールド債に魅⼒的な投資機会を⾒出しています。これらの2つの資産クラスはファンダメンタルズが良好であるだけでなく、バリュエーションが魅⼒的であり、また⼀般的なグローバル・ハイイールド債よりもデフォルト率が抑制されています。フロンティア市場債のデフォルト率は2023年、2024年ともに抑制されており、2025年もこの傾向が続くと当社は予想しています。 

アジア・ハイイールド債市場の発⾏体の70%以上は中国以外の国に所在し、スプレッドは厚く、デフォルト率は低⽔準です。中国の不動産セクターはアジア・ハイイールド債市場の10%未満であり、スプレッドとデフォルト率はともに⾼⽔準です 2025年には同セクターのデフォルト率が低下すると当社は予想していますが、前述の通り、政府の⽀援策に⼤きく依存しています。幅広い資産クラスに投資することができる制約の少ないポートフォリオでは、フロンティア市場債、アジア・ハイイールド債、株式等のリスク資産に対するヘッジとして、グローバル・ハイイールド債をアンダーウェイトにしています。

国債市場は、⽇本を除くほとんどの中央銀⾏が2025年に利下げを⾏うことを織り込んでいます。当社のベース・シナリオは、中央銀⾏が債券市場で織り込まれているよりも緩やかなペースで利下げを⾏うことを想定しており、このため、国債利回りに若⼲の上昇圧⼒がかかる可能性があると予想しています。中央銀⾏が想定している「中⽴⾦利」については、多くの先進国では2010年代に⾒られた⽔準よりもはるかに⾼く、2000年代に⾒られた⽔準よりもわずかに低い⽔準であると思われます。 

利回りが大幅に上昇。当社は国債利回りが⼤幅に上昇するとは予想していないものの、ポートフォリオの他のポジションとのリスク・バランスを考慮し、ポートフォリオのデュレーション・エクスポージャーを⼩幅にアンダーウェイトすることが適切であると考えています。当社は、ポートフォリオにおいてグローバル国債を若⼲アンダーウェイトすることで、他の債券資産クラスからのデュレーション・エクスポージャーを部分的に相殺しています。先進国の国債市場では、実質利回りは名⽬利回りの上昇と同様に若⼲上昇する可能性がありますが、英国については両者の利回り格差が縮⼩すると当社は予想しています。投資適格債のクレジット・スプレッドは歴史的な低⽔準となっています。信⽤格付けの引き下げは少ないままかもしれませんが、クレジット・スプレッドがここからさらに縮⼩する余地は極めて限定的です。

当社は、フロンティア市場債のポジションを通じて新興国通貨を若⼲オーバーウェイトにしています。今後は、新興国通貨の実質⾦利の上昇や魅⼒的なバリュエーション、さらには先進国の中央銀⾏による⼤幅な利下げによって新興国通貨は他の通貨(除く、⽶ドル)に対する相対的な魅⼒が増すはずです。

2025年の経済と市場の見通し

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著者
Rupert Watson
Julius Bendikas
Max Becker
Cameron Systermans

is Head of Multi Asset, Asia at Mercer

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