ジョブ型先進企業対談 KDDI x 富士通 x 日立製作所 x Mercer
HRインサイト対談。ジョブ型先進企業、集い、語る
2021年5月下旬より3回にわたり、各社の「ジョブ型雇用」への変革の取り組みをお伺いしてきました。そして9月17日に総集編として、KDDI株式会社、富士通株式会社、株式会社日立製作所の人事トップの皆様に一堂にお集まりいただきました。
ジョブ型企業でその推進をリードされている皆様に、ジョブ型雇用をどのように捉え、現在どんな課題に直面しているか?また、今後の可能性などについて、意見交換をしていただいた様子を書き起こしたフルレポートをダウンロードしていただけます。
対談のトピック
- KDDI、富士通、日立製作所の共通点・特徴
- 日本企業におけるジョブ型雇用の導入とその将来性
- チームワークやコミュニケーションの再定義ー欧米企業との違い
- 富士通社に学ぶー人員計画の権限移譲
- 日立社に学ぶーグローバルな人材マネジメントに問われるもの
- KDDI社に学ぶージェネレーションを超えた兼業・副業
- ジョブ型雇用導入に向けて最大のチャレンジとは
パネリストの皆様
白岩 徹(しろいわ とおる)様
KDDI株式会社
執行役員 コーポレート統括本部 人事本部長
支社、支店での直販営業、代理店営業、本社営業企画部、営業推進部、カスタマーサービス企画部長など営業/CS部門の経験を経て、2013年人事部長
2016年総務・人事本部 副本部長
2019年4月より現職
平松 浩樹 (ひらまつ ひろき)様
富士通株式会社
執行役員常務 CHRO
2009年より役員人事の担当部長として、役員人事・グローバル役員報酬の制度企画・指名報酬委員会の立上げ等に参画。
2015年より営業部門の人事部長として、営業部門の働き方改革を推進。
2018年より人事本部人事部長としてタレントマネジメント、幹部社員人事制度企画・ジョブ型人事制度の企画を主導。
2020年4月より執行役員常務として、ジョブ型人事制度、ニューノーマル時代の働き方・オフィス改革に取り組んでいる。
2021年より現職。
山本 夏樹(やまもと なつき)様
株式会社 日立製作所
人財統括本部 人事勤労本部長 兼 ㈱日立マネジメントパートナー取締役社長
2003年4月同社、人財戦略室 部長代理。
2006年8月 Hitachi Europe,ltd.Director/Corporate Planning(社長室長)。
2011年1月(株)日立製作所 人財統括本部 グローバル人事部長。
2015年4月同社、交通システム社人事総務本部 担当本部長。
2016年1月Hitachi Rail Italy Holdings, Director(在ナポリ)、2019年4月Hitachi Rail,Deputy CHRO(在ロンドン)。
2019年10月(株)日立製作所 人財統括本部 人事勤労本部長。
2021年4月 からは(株)日立マネジメントパートナー取締役社長を兼務。
取締役 執行役員 組織・人事変革コンサルティング部門 日本代表 パートナー
ジョブ型先進企業対談
(2021年9月17日に開催されたウェビナー対談の書き起こし。文中敬称略)
白井: 本日は、過去3回にわたりプレゼンテーションや対談を実施いたしました、ジョブ型先進企業3社-KDDIの白岩様、富士通の平松様、日立の山本様がお越しくださり、ジョブ型雇用と今後の課題についてざっくばらんにお話いただきます。
前回までご覧になっていない方もいらっしゃるかと思います。今までどのようなお話があったのか、簡単におさらいをさせてください。
KDDI、富士通、日立製作所の共通点・特徴
まず、3社様には共通点を感じました。1つ大きな特徴として、単純にジョブグレードを入れるとか、Job Description(以下、JD)を作れば良いとか、そうは捉えておられない。各社、複合的で全面的な人材マネジメント、雇用のあり方を変えていこうという興味深い取り組みをされています。
2つ目に共通するのは、事業・経営変革の一環として取り組んでおられる点です。必要な人材もマネジメントの仕方も変わるからこそ、人材マネジメントそのものを変革させなくてはならない。その意識からスタートし、総合的な変化につながっています。
施策レベルでは、ジョブグレードやそれに伴う報酬、キャリア自律を促す採用・異動・公募など、それらを基盤にHRITや人事機能、場合によっては要員計画などを変えていこうとする動きがジョブ型にはあります。3社様共に管理職の報酬グレードの施策は既に対応されており、程度の差は若干ありつつも社内公募・職種を意識した採用など、キャリア自律施策も確実に進められているのも共通していました。
次に、各社の特徴として、KDDI様は何と言っても社員のキャリア自律です。全体的な考え方や重点を置かれている意味では、WILL採用を通じて新卒でも職種別採用があっという間に5割、中途採用の増加に限らず社内公募も積極的に広め、JDを作りつつキャリアパスを明示しようという意図が強かったですね。
富士通様に関しては、施策が実に網羅的且つスピードが速い印象を受けました。ジョブグレードは当然のこと、公募の規模が大きいのですね。相当程度多くの管理職を公募で決めているお話も伺いました。その他、パフォーマンスマネジメントもユニークで、さらに日本企業として早いと感じましたのは、要員計画にもジョブ型を反映し始めている点です。
日立様は、「ジョブ型雇用」という言葉が流行る前から、ジョブを基軸にしたマネジメントを始められているので、この世界に詳しい方からすると老舗だと思われるのではないでしょうか。私の立場としてもそうです。ジョブグレードはもちろん、JDの構築から従業員のコミュニケーションなど基盤をしっかりされていますね。超大企業として、人事機能改革が大変進んでおられます。
その一方で、各社共にまだ完成していないというご認識でした。ギャップが顕在化しつつある職種別の市場価値もまだ部分的であり、キャリア自律を掲げてもなかなか個々の社員が変わったとは言えないともおっしゃっていました。いずれにしても、今後さらに人材マネジメントの変革を進め、質を高めていく方向性でいらっしゃいます。
スライドには3社の取り組みとして、縦に領域を並べました。KDDI様はやはり WILL採用、富士通様は要員計画や人件費、日立様は経営計画も含めグループ全体で動かすプラットフォームが秀でていらっしゃいます。
日本企業におけるジョブ型雇用の導入とその将来性
そろそろ対談に移らせていただきたいと思います。気軽に、どなたからでもお話ください。
会社の公式見解ではなく、ご自身のお考えでも構いません。まずは、日本企業におけるジョブ型雇用の導入は今後どのようになると思われますか?どう将来を予測されるか、ご意見をお聞かせください。
今後は年功制は縮小されていき、ジョブ型の雇用が拡大していくのではないかと。専門性を重視して活躍する場所を見つけていく流れは止められないと感じていますし、おそらく大学教育でもスタートしていくと思います。大企業、中小企業によってジョブの捉え方は広義になることもあると思いますが、基本的にはジョブ型雇用は今後拡大していくと考えています。
白井:年功制はもうさすがに厳しいという一般的な話に加え、若い方を中心に専門キャリアへという流れ、端的に今までのやり方では優秀な若手を惹き付けられないのでは、ということですね。平松さんはいかがですか?
ジョブ型は最近導入され始めたもののように言われていますが、僕自身はもっと身近に感じています。例えば、野球やオーケストラは既にジョブ型です。野球でピッチャーというポジションに150km投げる選手を採るのも、オーケストラで第一ヴァイオリンを弾く人もそうです。僕たちは草野球をやっていて、プロ野球に勝つためにはジョブ型にしなくてはいけない。オーケストラでパートが決まっていないのは、中学校のブラスバンドくらいですよね(笑)。それでは勝てなくなる。どんどんプロ化していくのだと思います。
もしかしたら、「プロ型人材マネジメント」の方が、分かりやすい方もいらっしゃるかもしれません。プロフェッショナル化した日本が大リーグと戦うことになるのだと思います。
白井:専門的なキャリアに対してジョブがある。それを追求するからこそ強くなれる。そこがジョブ型の良さの源泉なのでしょうかね。
山本:一段高いレベルをそれぞれが目指してプロ化していくことでしょうか。一段レベルが高くなったチームワークも必要だと思います。