「グローバル債券」枠の使い方
月刊『企業年金』「資産運用コンサルタントの視点」(2026年9月号掲載)[
図1. 国内債券とヘッジ外債の10年リターン
図3. 国内債券とヘッジ外債 (国債型) の累積収益率
環境は変わった。今や、為替ヘッジコストは高く、長期金利も企業年金の平均的な予定利率を上回っている。そこで冒頭の問いに帰る。外国債券は必要だろうか。「グローバル債券」とは何だったのか。本稿のメッセージは、端的にまとめるなら、国内債券代替としての機能はもはや必要ない、しかし、超過収益源の分散の手段として「グローバル債券」枠は活用できる、というものだ。
図1に米国投資適格社債 (為替ヘッジ) を追加して、図4を作成した。ヘッジ外債 (国債型) の10年間の収益性はほとんど国内債券と変わらないが、米国投資適格社債はこれをほぼ確実に上回ってくる。国債型を下回るデータもあるが、詳しく見ると、10年の投資期間が、グローバル金融危機など、クレジット・スプレッドが拡大した直後に終了する場合がほとんどだ。つまり、投資適格社債のクレジット・プレミアムは、かなり確度の高い超過収益源であることを示している。国内債券市場においても、社債のリターンは国債を継続的に上回っており、国内債券アクティブ・マネジャーの多くがベンチマークを上回っているのは、結局社債をオーバーウェイトしているからとも言われるぐらいだ。しかし、海外のほうが市場規模、銘柄数とも圧倒的に充実している。国内債券の代表的な収益率指数である野村BPI (総合) における社債の時価総額は65兆円 (金融債と事業債の合計; 6月末)程度だが、ブルームバーグ債券指数における投資適格社債の時価総額は米欧合計で2,000兆円近くに上り、銘柄数も14,000近く「選びがい」もある。確度の高い超過収益源としてクレジット・プレミアムは捨てがたく、そして、クレジット・プレミアムを取り込むなら、国内にとどまっている理由はない。
図4. ヘッジ外債10年リターンの国債型と社債型の比較
多種多様な債券が取引されていることも外国債券市場の魅力だ。とくに日本の投資家にとって今後とも使いどころがある債券として注目したいのは、変動金利型の債券だ。時の短期金利に連動して利金が決まる変動金利型の債券は、元本の金利変動リスクを負うことなく、上乗せスプレッドのみを収益源とできる点で、ポートフォリオの効率性改善に資するのだが、国内には適切な債券市場が見当たらない。海外でも決して市場規模が大きいわけではないが、資産担保証券やトレード・ファイナンス、スペシャルティ・ファイナンス等の領域にこうした債券がある。海外の変動金利債券には、単に金利リスクを回避するだけでなく、為替ヘッジコストに対する耐性も期待できる。外国短期金利の上昇は為替ヘッジコスト上昇要因になるが、このとき変動金利債券の利金も同じだけ上昇するからだ。
「グローバル債券」枠だからと言って、グローバル債券インデックスを意識しなければならない根拠は乏しい。「国内債券にも外国債券にも投資できる枠」と解釈すれば、今のように長期金利が十分な水準にあれば国内債券中心に構成し、再び超低金利環境がやってくるようであれば国内債券を減らすなど、その時々の環境に合わせて対応できる。短中期的視点で政策アセットミックスを変更する必要に迫られないのは、「グローバル債券」化の意義と整理できる。
「グローバル債券」化されたポートフォリオを引き継いだ運用担当者は、そういうものだと受け止めているかもしれないが、過去の市場環境に対応しようとした努力の跡であって、必ずしも「進化」ではなく絶対のものでもない。資産運用のフレームワークはその背景を理解し、アップデートの必要がないか、つねに検証が欠かせないのだ。