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資産運用におけるホームバイアスについての考察 

月刊『企業年金』「資産運用コンサルタントの視点」(2026年7-8月号掲載)

1.はじめに

国際分散投資は、複数の国・地域に投資することで各国固有のリスクを分散しつつ、世界経済の成長を取り込むことを基本的な考え方とする。ホームバイアスとは、理論上「適正」とされる比率を超えて自国資産を保有する傾向を指すが、この「適正値」については、すべての投資家に共通する唯一の正解があるわけではなく、政策資産配分のフレームワークや各投資対象に期待する役割によって変わり得る。そこで本稿では資産クラスごとに整理・検討する際のポイントを考察する。 

2.株式のホームバイアス

株式に期待される主な役割は資産価値の成長である。そのため、株式ポートフォリオでは、リスク・リターンの観点で最適なポートフォリオが求められるが、実務上は、時価総額に基づくグローバル株式指数を「適正値」の基準とみなす考え方が現実的である。長期の実績を見ても、国内に偏った株式ポートフォリオに比べ、グローバル株式指数は高いリターンをもたらしてきた傾向がある(【図表1】)。こうした点を踏まえると、株式のホームバイアスは是正することが望ましいと言える。
【図表1】2026年3月末基準の期間別リターン比較
出所:LSEG Datastreamのデータを基にマーサーにて作成
さらに、ホームバイアスの解消過程でその背後にある先進国偏重や大企業偏重といった構造的なバイアスも見直すことができれば、投資機会を広げつつリスク・リターンの源泉をより高度に分散できる。MSCI指数を例に取ると、先進国偏重を緩和するには投資対象をMSCI WorldからMSCI ACWIへ、大企業偏重を緩和するにはMSCI ACWIからMSCI ACWI IMIへと、ユニバースを段階的に拡大していくことになる(【図表2】)。
【図表2】グローバル株式指数の投資対象ユニバース 
出所: MSCI 2025年12月末時点

一方で、ホームバイアス是正にあたっては留意すべき点もある。国内株式からグローバル株式へ移行することは、ホームバイアスの解消に資する一方で、結果として米国株式への偏重につながり得る。実際、グローバル先進国株式の代表的な指数であるMSCI Worldでは、米国株式の構成比率が足元で約7割を占めている。 

 

米国株偏重を抑制する手段としては、一般に指数対比で米国株式の組入比率が低い傾向にあるアクティブファンドの活用が考えられる。しかし近年は、β(市場リターン)ではなくα(超過収益)の獲得という観点で、グローバル株式のアクティブ運用が総じて苦戦しており、投資家によっては積極的な選択肢として採用しにくい面もあるだろう。こうした点を踏まえると、米国株偏重を回避する目的で、理論的な「適正値」よりも国内株式を相対的に多めに保有するという選択も、直ちに否定されるものではない。

3.債券のホームバイアス

国債や投資適格社債などのディフェンシブ債券に期待される主な役割は、年金給付等に必要な安定的インカムの獲得であり、投資家によっては負債とのマッチング資産として位置付けられることもある。債券のホームバイアスの適正値を検討する際は、まず政策資産配分のフレームワークが負債対応主導型(LDI/CDI)か、それ以外かを確認する必要がある。 
【図表3】政策資産配分のフレームワーク例

負債対応主導型の場合、年金負債評価の割引率は自国の国債・社債利回りを基に算定されるため、負債対応部分の資産が国内債券中心となることは、ALMの観点から合理的に説明できる。 

一方、負債対応主導型ではない資産配分では、債券は負債対応に加えて「許容リスクの範囲でリターンを向上させる役割」も担う。この場合は、リターン・リスクの観点から望ましいポートフォリオを構築する必要があり、株式と同様に実務上は代表的なグローバル債券のベンチマークであるBloomberg総合指数に沿った配分を「適正値」とみなす選択肢が考えられる。主な債券指数の長期実績を見ても、国内債券よりもヘッジ外債が総じて健闘しているが、これは、多様な金利環境の国への分散やクレジット収益の上乗せが主な要因と考えられる(【図表4】)。特に、国内債券市場の国債比率は約85%と、クレジット投資の機会が限られる一方で、外国債券ではより多様な投資機会にアクセスできることから、リターン向上の面では外国債券の活用が欠かせない。

【図表4】2026年3月末基準の債券指数期間別リターン比較
出所:LSEG Datastreamのデータを基にマーサーにて作成

また、足元の国内金利の回復により、国内債券の期待リターンが向上していることから、リターン・リスクの観点からも国内債券の配分を増やす動きが出始めている。日本では長らく低金利環境が続いたため、利回りを求めて国内債券の代替としてヘッジ付外債の活用が進んできた。しかし現在は、代替策として外債に依存せずとも、国内債券そのものの保有で一定の利回りを確保し得る環境になりつつある(【図表5】)。これは「ホームバイアスの拡大」というより、基本資産である国内債券への回帰と捉えることができ、ALMの観点から合理的に説明できる。 

さらに、これまで日本の低金利環境を背景に資産と負債のマッチングを行っている投資家は多くなかったが、国内金利が回復した今、LDI/CDIも投資家の現実的な選択肢になり得る。 

【図表5】各国10年国債利回り社債利回りの比較(ヘッジコスト控除後)
出所:LSEG Datastreamのデータを基にマーサーにて作成

4.まとめ 

株式のホームバイアスは、リターン・リスクの観点から適正値を導く必要があり、基本的には是正していく方向が望ましい。一方で債券は、ALMの観点から適正値を導くことが重要であり、国内債券の保有比率が高いこと自体が直ちにホームバイアスを意味するとは限らない。ただし、負債対応を主目的としない配分では、株式と同様のアプローチで適正値を検討することになる。 

そのうえで、最も避けるべきなのは、投資家が意図せずホームバイアスを取っている状態である。過去の実績からは、ホームバイアスが長期的リターン低下の要因となり得ることも示唆されるため、あえてホームバイアスを取るのであれば、投資家として合理的な理由と説明が求められる。まずは、ホームバイアスを投資家が管理すべきリスクの一つとして再認識し、「投資家自身にとっての適正値」を整理することをお勧めしたい。 

著者
岸田 理恵

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