基本資産配分策定と短期的な市場見通しのズレについて
『オルイン』(2025年冬号 掲載)
資産運用において、基本資産配分は重要な役割を担っている。各資産の期待収益率など長期的な前提に基づき資産配分を策定することで、適切なガバナンスの下でのポートフォリオ運営を可能にするからである。一方、基本資産配分の策定には、長期的な時間軸が用いられるため、アセットオーナーの足元における市場見通しとの間にギャップが生じることがある。例えば、国内金利の上昇に伴い国内債券の相対的な魅力度が増しているため、基本資産配分では国内債券の配分比率が増えやすい。一方で、短期的には金利上昇によるキャピタルロスが続いており、そのギャップを感じるアセットオーナーの声も聞かれる。
このギャップに対する主なアプローチとしては、以下の三つが考えられる。
一つ目は、各資産に割り当てる金融変数に短期的な見通しの重みを加える方法である。従来の10~20年といった長期前提ではなく、より短期的な投資期間に基づいた金融変数を用いることで、基本資産配分の策定と短期的な市場見通しを一致させるものである。これにより、見通しのギャップを直接的に抑制できる。ただし、この方法では足元の状況の比重が増すため、基本資産配分の策定サイクルも短期化することが望ましい。一般的な策定サイクルのままでは、前回の見通しから大きく逸脱した状態の補正が遅れる可能性があるからである。
二つ目は、基本資産配分の枠組みを資産クラス単位ではなく役割別にするなど、より柔軟に設計する方法である。この場合、基本資産配分とは別に、通常の資産運用活動の中で短期的な市場見通しに沿った運用商品の入れ替えを行い、基本資産配分とのギャップに対応する。枠組み自体が柔軟になるため、ポートフォリオ全体のリスクや組入可能な資産クラスの特性を考慮し、投資判断に制約を設けて適切なガバナンスを維持する必要がある。
三つ目は、ダイナミックアセットアロケーション(DAA)を導入する方法である。基本資産配分は長期前提で策定するが、短期的な市場見通しに基づき基本資産配分からの乖離を認めるものである。この場合、基本資産配分からの乖離はアクティブリスクなどでモニタリングし、コントロールする必要があるが、見通しのギャップに対する違和感を解消できる。
いずれの方法にも一長一短があるため、アセットオーナーの運営体制を踏まえ、実現可能なアプローチを選択することが重要である。特に、資産クラスや国、セクターごとに異なる動きが見られる現在のような環境下では、短期的な市場見通しをポートフォリオ運営に取り入れる方法として検討できると考える。