国内債券回帰を実行へ
『オルイン』(2024年冬号 掲載)
これまで長らく続いてきた日本の低金利環境下では、国内債券の代替として主にヘッジ外債に利回りを求めてきた。特に年金給付に対応する資産として位置付ける運用では、債券に安定したキャリー(インカム+ロールダウン)の獲得を期待している。
しかし、ヘッジ外債はここ数年、高いヘッジコストと逆イールド(短期金利が長期金利よりも高い状況)により、期待するキャリーの獲得ができていない状況が続いている。米欧で5月以降特に短期ゾーンの金利が低下し、逆イールド解消の兆しが見られる点は朗報であるが、日本と海外の短期金利差縮小に伴うヘッジコスト低下への道筋はいまだ不透明であり、ヘッジコストが米欧で長期金利を下回る水準で安定するまでには時間がかかることが想定される。そのため、特に国債の運用においてはインカムの面でプラスリターンが引き続き見込みにくい。
一方、国内の金利水準には回復が見られ、足元では国内債券に一定程度のキャリーが期待できる環境になっている(マーサー推計のローリング・イールドは1.2%程度)。これまで頭を悩ませていたヘッジ外債への対応策としても、国内債券回帰を本格的に検討できる環境が到来した。
とはいえ、日銀の追加利上げ期待などから国内金利には上昇リスクがある点に留意が必要である。足元の国内長期金利が1%程度であることから、ここからの上昇余地は限られていると考えられるものの、もし国内金利が1%上昇すれば、国内債券で▲9%程度のリターンを覚悟しておかなければならない(国内債券の代表的なベンチマークである野村BPI総合の修正デュレーション(金利感応度)は9年程度)。短期的な金利上昇リスクを極力回避しつつ、国内債券へ回帰する選択肢は以下のようなものがある。
- パッシブファンドを活用する場合、タイミング・リスク軽減のため分割実行
- 金利上昇の影響が少ない年限の短い債券に移し、金利上昇が落ち着いた後、長い年限へシフト
- キャリーを一定程度確保しつつ金利リスクを柔軟にコントロールできる国内債券アクティブファンドを採用
- 必要な給付資金にキャッシュフローをマッチングさせた持ち切り運用を採用(持ち切れば実現しない期中の評価損は許容)
なお、ヘッジ外債は金利低下に伴うキャピタル収益獲得の可能性を残している点、また、幅広い国や種別の債券への投資を通じて、国内債券にはない投資機会を提供する点において保有意義はある。投資家それぞれの投資目的にあった運用を様々な角度から検討することが大事である点は最後に申し添えたい。