マーサーは新たに拡大したマーシュブランドの一員となり、より一層の価値をご提供します。

Mercer Collegeで人事のケイパビリティを高める。日東電工の戦略人事人材育成 

企業を取り巻く環境が大きく変化する中、人事部門には事業戦略の実行を支える「戦略人事」としての役割が求められています。その実現に向けては、人事パーソン一人ひとりの知識や専門性を体系的に高めていくことが重要です。

マーサーでは、人事領域を体系的に学ぶプログラム「Mercer College」を提供しています。本記事では、その活用事例として、日東電工株式会社(以下、Nitto)における人事部門のケイパビリティ強化の取り組みについてお話を伺いました。

パネリストの皆様

(左から山村様、山本様、岡様、前川)

コーポレート人財本部戦略企画部 部長 岡 芳洋 様

コーポレート人財本部戦略企画部 係長 山本 隼輔様

コーポレート人財本部戦略企画部 係長 山村 大志様

インタビュアー:前川 尚大

組織・人事変革コンサルティング部門 シニアプリンシパル

オープニング、企業紹介

前川:本日は、Nittoの岡様、山本様、山村様をゲストに迎えて、お話を伺います。御社は事業面でも人材マネジメントの面でもさまざまなチャレンジをされており、本日お話を伺えることを大変楽しみにしておりました。まずは、御社の現在の事業の取り組みについてお聞かせください。

岡様:Nittoは電気絶縁用材料からスタートした会社です。現在は3つの事業を柱としています。1つ目は電子部品や半導体の製造などに使う工業用テープなどを扱う「インダストリアルテープ」。2つ目はスマートフォンなど情報端末に用いられる光学フィルムや回路材料を扱う「オプトロニクス」。3つ目がライフサイエンス領域や衛生材料などを扱う「ヒューマンライフ」です。

近年はグローバル化により、多様な市場に対応できるよう、組織や従業員のケイパビリティを継続的に高めていく取り組みも強化しています。

テーマ1:グローバル環境の変化と、人事に求められる『戦略人事』

前川:グローバル展開を進められる中で、事業運営や組織において従来との違いを感じる部分はありますか?

岡様:まず、従業員一人ひとりが担う役割や求められるスキルは大きく変化してきています。単に良い製品をつくるだけでなく、どのようなプロセスでそれを実現しているのかまで問われる時代になりました。

それに伴い、グローバルに対応できる人材の育成に加え、ESGやサステナビリティ、コンプライアンスといった観点も重視されるようになり、人事部門に対する期待も変化しています。

従来の人事は給与計算や労使関係、職場環境整備といったバックオフィス機能が中心でしたが、今後はそれ以上の役割を期待する声も多く寄せられています。多様化する事業環境の中で、戦略を実行できる人材を確保・育成すること、つまり「守りの人事」だけでなく「攻めの人事」への転換が求められています。

前川:その「攻めの人事」を担うのが、皆様がいらっしゃるコーポレート人財本部戦略企画部なのでしょうか。

岡様:当社の本社人事機能は、グローバルのヘッドクォーター機能を担うコーポレート人財本部と、日本エリアの人事業務全般を担う日本エリア人財・ガバナンス本部の2組織に分かれています。戦略企画部はコーポレート人財本部の一部門として、人事戦略の企画や推進を担う立場にあります。ただし、戦略はコーポレートだけが担うものではありません。どの部門でも、戦略的な人事へシフトするために何をすべきかを考えることが重要です。

前川:オペレーション領域のAIなどによる代替が進むいま、コーポレートだけが戦略を担うのではなく、すべての部門において事業ニーズを捉えて先回りする役割を持つことがより重要になりますね。

テーマ2:従来のOJTでは追いつかない、人事パーソン育成の課題

前川:人事部門として感じている具体的な課題や、解決したいテーマについて教えてください。

岡様:従来型の人事パーソンの育成だけでは追いつかない領域が出てきていると認識しています。これまで人事の育成はOJTが中心で、現場の業務を通じて経験を積みながら学んでいく形でした。しかし現在は、製品を販売して成長していくオーガニックグロースだけでなく、M&Aや構造改革、他業界とのアライアンス、さらにはサステナビリティへの対応など、事業環境が大きく変化しています。

そのため、「次に何が起こるのか」を見据えながら学び続ける姿勢がこれまで以上に重要になっています。OJTはもちろん重要ですが、加えて、今の環境の変化に合わせた人事に必要な知識やスキルを体系的に学ぶことが不可欠だと考えています。

テーマ3:Mercer Collegeを受講した背景

前川:そんな環境の中で「Mercer College」を受講された背景を教えてください。

岡様:先ほどお話ししたように、以前の当社の人事パーソンの育成は、本社と拠点の人事部門をローテーションしながら経験を積み、多面的な視点を養っていくケースが効果的であり、一般的でした。

しかし、現在はライフスタイルの多様化などにより転勤を前提とした育成は難しくなり、さらに雇用の流動化によって10年、15年かけて育成するモデルも機能しにくくなっています。ローテーションを促す各施策は継続しながらも、人事に必要な知識やスキルを体系的に学ぶ仕組みとして、グローバルに通用する人事プロフェッショナルの育成や人事リテラシー向上を目的とした「Mercer College」を導入、活用をしています。

また、事業の変化に伴い、求められる人材像も変わってきています。従来は化学系のエンジニアやサイエンティストを中心に人材を確保してきましたが、最近では「モノ売り」から「コト売り」へとビジネスモデルが変化し、サービス設計やソリューション提案ができる人材、DXやマーケティングに強い人材の確保も重要になっています。

こうした人材の採用や育成についてさらに効果を高めるため、「Mercer College」で学び、採用マーケティングなどの考え方を自社に応用しながら取り組んでいます。

前川:ありがとうございます。人・組織領域を広く学びつつ、関心分野を専門的に深められる点が「Mercer College」の特徴ですので、そのようにご活用いただけているのは大変うれしく思います。「Mercer College」では、「戦略人事」という考え方をベースに、将来の事業戦略から必要な人材や組織を定義し、それを実現するために人事の各領域がどのように連携するのかを整理しています。そうした全体像を理解することが、戦略的な人事を進めるうえでも重要です。

テーマ4:社内勉強会による学びを実務につなげる取り組み

前川:実際に「Mercer College」を受講してみて、いかがでしたでしょうか?

岡様:非常に役立っています。実は、導入当初はeラーニングを受講するだけに留まってしまっていたため、教材の内容と日々の業務とのつながりが見えにくいという課題がありました。

そこで、社内勉強会を立ち上げ、「Mercer College」で学んだ内容と実務を結びつける取り組みを始めました。社内で実際に行われている取り組みと教材の内容を関連づけたり、受講者自身がテーマを設定し、学びを踏まえて提言につなげたりしています。こうした運営は、主に山村と山本が中心となって進めています。

山村様:「Mercer College」の開講は今年(2026年)で3年目になります。初年度から、学んだ内容と現場での活用を結びつけることを意識して、社内勉強会を実施してきました。

今年からは毎月開催に切り替え、私と山本で事務局を担当し、「Mercer College」のカリキュラムに合わせて関連部署に講師役を担ってもらいます。30〜45分ほどの講義の後、受講者同士で議論し、「自分たちならどう考えるか」を整理するところまでを毎回セットで行っています。

さらに1年間の受講期間の締めくくりには、学びをもとに人事部門全体に対する提言をまとめ、役員も含めた場で発表する機会を設けています。

前川:アウトプットまで行い、さらには役員まで巻き込むかたちを取られているのですね。

山本様:勉強会は、人事部門の定例イベントのような位置づけになってきました。これを通じて、人事部門全体のケイパビリティを高めていこうという意識は、上層部も含めて共有されています。

また、人事業務は領域が多岐にわたるため、担当ごとに業務が分断されやすく、同じ人事部門内でも、他の担当が何をしているのか見えにくいという課題があります。その点においても、勉強会は他部門の取り組みを知り、自分の業務とのつながりを理解する良い機会にもなっています。

勉強会前には事前に該当モジュールを受講し、各自が考察を深めたうえで臨むことを求めています。毎月こうしたプロセスを繰り返すことで、受講者が継続的に自己学習するサイクルも生まれ、自然と学習習慣が定着しています。

一方で、学んだことを実務で活かす機会を増やしていくことも必要だと考えています。当社では評価、採用、教育など機能ごとに組織が分かれているため、担当領域を超えたテーマはどうしても実務で活用する機会が限られてしまいがちです。

現在も提言発表などアウトプットの場を設けていますが、今後は組織体制や業務の設計も含め、より一層インプットとアウトプットのバランスを高めていく必要があると考えています。

山村様:初回の勉強会は対面式で実施し、受講者全員が集まって半日かけて議論しました。その際は私も一部講師役を務めたのですが、自分の中でも言語化できていない部分や整理できていない論点が少なからずあることに気づかされました。受講者からの質問を受ける中で、新しい視点を得られる場面も多く、議論が非常に活発になりました。

そうした意味でも、勉強会は単なる知識共有の場ではなく、互いに考えを深め合う場になっています。今後も継続していく中で、さらに議論が深まっていくことを期待しています。

岡様:3年間取り組んできた中で、個々の「自分も何かしなければいけない」という意識は確実に高まってきています。今年は前川さんにも講演いただき、人事部門全体のうち約半数が参加しました。私自身も、意識の変化を実感した瞬間でした。

前川:素晴らしいですね。やはり一人ひとりの意識が変わることが、変革の出発点になりますよね。

テーマ5:Mercer Collegeに期待すること

前川:そのほかに「Mercer College」で印象に残っている点はありますか。

山本様:コンテンツが非常に網羅的で、これから人事に求められるテーマが幅広く整理されている点が印象的でした。

私自身、現在はグローバルHRと、試験的に一事業部門のHRBPを担当していますが、どちらも立ち上げ段階だったため、体系的に学べたことは実務でも非常に役立っています。実際に課題に直面した際には、受講時のメモを見返しながら検討することも多く、実務と直結した学びを得られています。

前川:「Mercer College」では一部資料をダウンロードできるようにしており、議論の際の資料として使ったり、「一般的にはどう考えるのか」「グローバル企業ではどのような実践があるのか」といった観点で辞書のように参照していただく使い方も想定しています。また、ユーザー勉強会などを通じて、そうした知見を共有する機会も設けていますが、御社ではどのように活用されていますか?

山本様:まさにそのように活用しています。特にユーザー勉強会では、視野が大きく広がりました。「Mercer College」という共通言語のもとで他企業の方と交流できたり、マーサーのコンサルタントの方に直接質問できたりする場はとても貴重で、非常に良い機会でした。もし可能であれば、東京以外でも対面で参加できる機会があると嬉しいですね。

前川:コミュニティづくりは私たちも重視しているので、今後検討していきたいと思います。また最近では、「Mercer College」修了者向けにデジタルバッジの発行も始めています。エッセンシャルコースを修了すると「人事プロフェッショナル認定資格」にチャレンジできる仕組みですが、こちらについてもご活用いただいていると伺いました。

山本様:LinkedInに修了証を掲載しています。まだ始まったばかりの取り組みですが、将来的には米国の人事専門家協会であるSHRMのような、日本における人事プロフェッショナルの認定資格コミュニティのような位置づけになるとおもしろいですね。

前川:まさにおっしゃっていただいた世界を実現するため、現在は「Mercer College」に加え、複数のスクール事業と連携しながら認定資格のコミュニティづくりを進めています。

テーマ6:HRBP立ち上げと人事ケイパビリティ強化

前川:ほかに、人財本部のケイパビリティを高めるために取り組んでいることがあれば教えてください。

岡様:人事パーソンとしての成熟には、「どれだけ多様な視点や経験を持てるか」が重要だと考えています。これまでは転勤などを通じて経験を積む機会がありましたが、現在はそれを前提としたかたちが難しくなっています。そこで、プロジェクトベースで異なるテーマに関わる機会を設け、普段とは違うメンバーや役割で仕事をすることで、新しい視点や知見を得られるようにしています。

また、現在はHRBPの立ち上げにも取り組んでいます。HRBPが機能することで、事業側からのフィードバックやインプットが人事部門により多く入るようになり、それに応える形で人事部門全体のケイパビリティも高まっていくと期待しています。

前川:プロジェクトベースで経験の幅を広げることや、HRBPの立ち上げによって事業視点が強化されていくということですね。

岡様:はい。HRBPについては、人事出身者だけで構成するのではなく、事業部門の最前線にいたメンバーにも加わってもらい、一緒に人事課題に取り組むことで、事業側の視点や知見を取り入れていく予定です。

前川:HRBPの立ち上げは、現在どのように進めているのでしょうか?

山本様:現在は、ある事業部門でHRBPを試験的に導入しています。それと並行して、全社的なHRBP体制の構築も検討している段階です。実際に進めてみると、「HRBPは何をする役割なのか」という理解を事業側に持ってもらうことも重要なテーマになります。試験的に導入して約3年が経ち、徐々に役割や活用の仕方を理解していただけるようになってきました。

今後はこの経験をモデルケースとして、他の事業部門にも展開していきます。ただ、従来の人事業務でキャリアを積んできたメンバーの意識も含め、全社で同じ方向を向くことは決して簡単ではないため、そこが大きなチャレンジとなります。

前川:そうした変化を進める上でも、「Mercer College」での学びや社内で議論する機会が活きてきそうですね。

山本様:そうですね。人事として事業にどのような価値を提供するのかを議論する場があることは、意識を変えていく上でも大きいと思います。

テーマ7:Mercer Collegeをおすすめしたい企業・人事パーソンとは

前川:最後に、この記事をご覧になる方の中には、人事として課題を感じている方や、「Mercer College」の受講を検討されている方も多いと思います。どのような方におすすめしたいと感じますか?

岡様:特定のケースというより、「今のままでいいのだろうか」と感じている方には、ぜひ一度トライしてみてほしいですね。例えば、自社の人事のやり方がこのままでいいのか、他社と比べてどうなのかと感じている方や、同じ領域の業務を続ける中で自分のキャリアに不安を感じている方もいらっしゃると思います。

「Mercer College」は人事領域を網羅的に整理しているので、自社の取り組みと照らし合わせて「何ができていて、何ができていないのか」を確認するベンチマークとして活用できます。人事部門の管理者であれば組織の取り組みを見直す材料になりますし、個人にとっても、自分の理解度や強化すべき領域を把握する機会になるはずです。

前川:本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。

2026年3月2日 対談実施

インタビュアー

前川 尚大
組織・人事変革コンサルティング部門 シニアプリンシパル

Related Solutions
    Related Insights