ポートフォリオ運用における金投資
22 9月 2025
長年、低インフレ/デフレが続いた日本も2022年以降はインフレ率が上昇し、2025年6月までの3年間では、消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)が年率3%を超え、インフレが定着しつつある。インフレが一時的なものに終わらない場合、給付が明示的にはインフレに連動しない日本の企業年金制度の資産運用でも、退職後の購買力維持のための来るべき制度改定に備え、インフレ分を積み上げることの必要性は、以前のマーサーコンサルタントコラム「企業年金の資産運用がインフレについて考えておくこと」で触れた通りだが、企業年金以外のアセットオーナーにとって、インフレの定着は諸コストの上昇という形で直接的に影響を及ぼしており、資産運用における目標リターンの引き上げ圧力となっていることは想像に難くない。そのような中、インフレ対応の投資資産の1つとして金が挙げられることが多い。
また、金に関しては、有事に強い安全資産、ポートフォリオにおける分散効果といった役割が期待されることも多い。本稿では、それらの実際の効果を検証してみたい。インフレ環境下での資産運用に関しては、「インフレ下の資産運用考」でも取り上げているので、併せて参照されたい。
インフレ・ヘッジとしての金投資
まずは、金のインフレ・ヘッジとしての機能だが、図表1は、過去20年における金相場を上昇局面と下降局面に分け、それぞれの期間におけるインフレ率と比較したものである。なお、検証の対象期間において日本は低インフレ/デフレの期間が大半を占め、また、金価格は米ドル建てであることから、金相場と米国のインフレ率を比較している。
この結果を見ると、金は20年の通期ではインフレ率を大きく上回るリターンをあげてはいるものの、2つの下落局面ではインフレ率に大きく劣後しており、インフレ率との連動性は必ずしも高くない。特に、インフレ率が比較的高かった2020年8月~2022年10月の期間においては、8.8%のマイナス・リターンとなっており、インフレ・ヘッジの役割は果たせていない。なお、この期間の金相場は2022年の下げ幅が特に大きかったが、これは米国金利の上昇を受け、利息を生まない金の魅力度が低下したことが背景と考えられる。
図表1. 金価格とインフレ率
金投資のその他の特性
図表2. 金、債券、株式の比較
相関係数は株式よりも債券の方が少し高いが、相関が高いというほどの水準ではなく、ポートフォリオにおける分散効果は認められる。その一方で、リスク(標準偏差)は16.8%と債券よりも遥かに高い点は留意を要する。安全資産と捉えられることの多い金ではあるが、ボラティリティの観点では決して安定した資産ではなく、リスクは株式並みに高い。
なお、国内の投資家にとって、より重要な円ベースの数値は図表3の通りである。米国資産と比べると、債券との相関は若干低く、株式との相関は若干高いものの、各資産クラスとの相関は総じて低く、やはり分散効果は期待できる資産だと言える。