マーサーM&Aお悩み相談室 第1回
21 9月 2023
質問
回答
ものすごく大雑把に言ってしまうと、デューデリジェンスは候補先になっている会社を本当に買って大丈夫か、いくらで買えばいいのか、買った後に何をすべきかを事前に調査・把握しておくことです。M&Aはしばしば結婚に例えられることがあるのですが、お付き合いしている時=取引相手である時は気にならなかったとしても、結婚して家計を一つにするとなると、事前に相手に確認しておかないといけないことが出てきますよね?
つまり、本当に結婚していいのか(リスク回避の視点)と結婚後の生活はどうなるのか(バリューアップ・シナジー創出の視点)という観点から相手のことをよく知って、二人の生活を考えた結果として婚姻届けに判を捺すかどうか判断するための調査がデューデリジェンスなのです 。
リスク回避の視点といった場合のリスクは大きく3つに分けられます。
一つ目は、悪い仲間と付き合っていないか、暴力を振るうような人ではないかなど、結婚そのものを妨げるリスクです。人事デューデリジェンスで言えば、重大なコンプライアンス問題や、キーパーソンの離職リスクなどの調査です。
二つ目が、多額の借金を抱えていないかといった家計を一緒にする前に知っておくべきリスクになります。年金債務の大きさや、未払い賃金の有無などが該当します。
最後が、実家から受けているサポートはどうなるのか、金銭感覚は合うのかなどの一緒に生活していく上でのリスクです。重要ポジションにいる親会社からの出向者、給与計算など親会社のシェアードサービスの有無、事業計画への人件費プロジェクション織り込みといった項目です。
次にバリューアップ・シナジー創出の視点ですが、これも更に2つに分けて考えることができます。
一つが、二人の価値観のすり合わせや、マイホーム購入のタイミングと資金計画といった、結婚後の生活の質の向上に関するすり合わせです。つまり事業成長のオポチュニティの把握であり、組織・人事分野では組織カルチャーの調査や、事業計画実現に向けた経営陣の傾向・特徴の確認になります。
もう一つが、携帯電話の家族割引や、2台あった自動車を1台に減らすなどの結婚することで節約できる部分の把握です。医療保険統合によるボリュームディスカウントや、管理部門など重複機能の削減余地の検証をイメージしてください。
もちろん細かな項目はM&Aの案件ごとに変わりますが、人事デューデリジェンスにあたっては上記の5つの観点からリスクとオポチュニティを確認・検証するために何を調査すれば良いか考えてみてはいかがでしょうか。また、ご相談をお待ちしています。
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