終身年金の値段は?公的年金の繰り下げ受給という選択肢 

05 12月 2022

70歳から年間50万円の終身年金(生きている限りもらえらる年金)を受け取るためにはいくら必要だろうか。

結論からすると600万円あればいい、というのが答えとなる。

「意外と安い」と感じたのではないだろうか。実は、この終身年金は保険会社の取扱商品ではなく、公的年金から払われる追加の年金である。

 

公的年金の繰下げ受給、その期間と増額率の関係性

公的年金では「年金の繰下げ受給」という制度がある。公的年金を65歳で受け取らずに繰下げて、増額した年金を受け取ることができる受給方法だ。繰り下げた期間によって年金額が増額され、その増額率は一生変わらない(老齢基礎年金と老齢厚生年金は別々に繰り下げすることができる)。この繰下げによる増額率は、ひと月当たり0.7%であり65歳から70歳まで繰下げをすると増額率は42%にもなる。

請求時の年齢と繰下げ増額率:

請求時の年齢 66歳 67歳 68歳 69歳 70歳 ・・・ 75歳
増額率 8.4% 16.8% 25.2% 33.6% 42% ・・・ 84%

例えば、10万円/月の年金額を65歳から70歳まで繰下げると、繰下げ期間中は年金を受け取れないため総額600万円(=10万円×12か月×5年)の年金を受け取ることができない。一方、65歳から70歳まで年金を受け取らない代わりに、70歳からは10万円/月の年金ではなく14万2千円/月の年金を受け取ることができる。これは、毎月4万2千円増額されたことになり、年間にすると50万4千円の増額となる。

公的年金を繰下げている期間中の600万円を用意できれば、70歳から年間50万円の終身年金(公的年金の増額分)を上乗せで受け取ることができる。これが冒頭の問いの答えである。

 

思案材料となる平均余命、税金や社会保険料

第 23 回生命表(完全生命表)によると、65歳時点の男性の平均余命は19.97年(女性で24.88年)であり、平均的には70歳からは約15年間にわたって増額した年金を受け取ることができる。毎年50万円の年金を男性が65歳時点の平均余命である85歳まで(70歳から15年間)受け取った場合には総額は750万円、女性の平均余命まで受け取れる場合は1,000万円にもなるのであるから、65歳時点までの平均余命まで生きた人にとっては得する制度であると言える。

ただし、気を付けなくてはならない点もある。受給開始後すぐ亡くなる場合には繰下げない場合と比べて少なくなる場合がある。また、増額された年金には税金や社会保険料がかかり、手取りの金額としてはそこまで増えないという点も指摘させていただく。

では、これをどう捉えるべきであろうか。私は、それでも繰下げを選択する意味があると考える。

 

長生きリスクへの備えを考える

今や男性で4人に1人、女性では2人に1人が90歳まで生きる時代となっている。今後もさらに平均寿命が伸びていくことが想定される。そういった中、老後に備えなくてはならいリスクとは想定より若く亡くなるリスクより、想定より長生きしてキャッシュが足りなくなる「長生きリスク」と言えないだろうか。それに対応するためにも、繰下げは有力な選択肢と言えよう。

なお、確定給付企業年金(DB制度)においては終身年金を維持している会社は今や少数派であるが、このように公的年金の貰い方を工夫することで、終身年金がない会社やそもそもDB制度がない会社であっても、退職一時金などで一定の金額を準備できれば長生きリスクに備えることが可能となるのである。

※「年金の繰下げ受給」には、繰下げ期間中の加給年金が支給されない、働いて年金が支給停止されている部分は繰下げできないなど、様々な留意点があるので、実際に制度を利用する場合には厚生労働省のHPで詳細を確認することをお勧めしたい。

 

著者
寺澤 恭輔
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