効果的なDC運営のための従業員サーベイ活用
21 4月 2021
DCにおける企業の役割・責任
DC(確定拠出年金)の普及率は年々増加してきているものの、その運営にはまだ多くの課題がある。DCにおいては、運営管理機関が提示する運用商品ラインナップや投資教育等のサービスが従業員の老後資産形成に大きな影響を及ぼすため、プランスポンサーである企業は従業員の利益を考慮して、それらを定期的に評価することが法令上求められている。しかし、実際は運営管理機関に任せっきりである企業も少なくないだろう。
評価にあたっては、運用商品であれば信託報酬の水準や運用成績、投資教育であれば資料・説明の分かりやすさや提案力等といった分析が必要であるが、それらに加えて従業員サーベイの実施を推奨する。従業員の満足度やエンゲージメントを測定する従業員サーベイは古くから活用され、特に近年ではESG 投資の拡大等に伴い、それらを指標化し統合報告書等で投資家へアピールする動きやリモートワークへの移行による従業員フォロー対策としても幅広く活用されている。具体的に、DCにおいて従業員サーベイから得られる効果を見てみたい。
従業員サーベイの効果
- 従業員のニーズを理解し適切な施策を講じることができる
- 従業員一人ひとりのニーズや商品・運用・制度への理解度に合わせて、運用商品ラインナップや投資教育のコンテンツを検討すべきである。
- 例えば、リスク許容度が低いという結果であれば高リスク商品の導入は慎重になるべきだ。また、年代や従業員の属する部門ごとに制度への理解度が異なる場合は、投資教育を年代別・部門別に実施する等の工夫を凝らすことも考えられる。退職給付制度そのものについての理解の浅い従業員に対して金融商品に関する教育を行っても、効果は低く退職給付制度のメリットをあまり実感しないだろう。
- 行動の改善を促すきっかけとなる
- 心理学の見地から、従業員サーベイは行動変化のきっかけとしても期待される。
- 実際、マーサーが支援した企業様においても従業員サーベイの実施前後でマッチング拠出の申込者数や元本確保型以外商品の選択率等において有意な差が見られた。一方的な教育だけでは不十分である。
- 従業員のエンゲージメント向上
- 定期的に意見聴取する機会を与え、またその結果に応じた施策を講じることで老後資産形成を支援するという会社のコミットメントを従業員が感じ、エンゲージメント向上に寄与するだろう。
- 筆者の経験上、企業が提供する福利厚生制度を理解している社員は期待しているよりずっと少ない。福利厚生制度のコストに見合った効果を得るためにも継続的に行うことが望ましい。
DCに限定せず、福利厚生制度全般のサーベイとして活用することも考えられる。例えば、福利厚生制度全般のサーベイを行うのであれば、どの制度に対して従業員は価値があると考えているのか、企業の方針とも照らし合わせて今一度、各制度のあり方を点検することも推奨される。
著者
永島 武偉
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