社員の意識・行動の変革における現状分析の重要性 

21 11月 2019

昨今、お客さまとディスカッションさせていただく中で、社員の意識・行動の変革に関わるテーマの相談が増えている。AI等テクノロジーの進化、競争環境の益々のグローバル化、働き方改革等、環境変化が加速する中、企業は継続的にビジネスを変革し、その担い手たる人材の意識・行動も変革する必要に迫られていることが背景にあると考えられる。

社員の意識・行動の変革に向けては、変革プロセス、チェンジマネジメント等と呼ばれる各種方法論が一般的になりつつあるが、実際に実行するとなると壁にぶつかるケースが少なくない。その理由としては、本質的に人間は変化に対してネガティブな感情を持ちやすいこと、現状のビジネス・オペレーションに対して最適化された制度・ルールが変化を妨げる方向に働きやすいことが挙げられる。

ある歴史ある大手日本企業において、環境変化に対応した社員の意識・行動の変革が進まない問題に直面していた例をご紹介したい。既存事業の変革、新規事業の創出が求められる中、社員は既存の仕事の進め方に固執する状況にあった。変革に向けて人事制度改定を行うも、趣旨を骨抜きにするような運用が行われ、効果を出せずにいた。また、M&Aにより事業領域の拡大を行うも、買収した企業を自社の組織風土に染め上げた結果、人材の流出が止まらず、意図した成果は出ていなかった。

現状分析を進めると、根深い問題が見えてきた。組織は、本社が決め現場が実行する役割分担が明確で、上位下達が強い指示命令系統が組まれていた。また、新卒・総合職で採用した人材を一律に育成し、本社の指示に従い、決められたルールの中で最適に執行することに長けた人材を大量生産していた。その中で培われた組織風土も、新たな事業領域にチャレンジすることよりも、既存事業で確実に成果を出すことを優先するものであった。さらには、人材マネジメントの各要素が相互に影響し合い、何かを変えても、他の要素が変化を阻害し、現状により戻す状況であった。

変革を実現するためには、新たに社員に求める意識・行動に整合した形で全面的に人材マネジメントを変化させる必要がある。そのためには、変革を妨げている現状の人材マネジメントを解きほぐし、硬直的な状況を生み出している根本要因(=変革に向けたキーレバー)を特定することが必要だ。上記の例においては、「本社・現場の役割分担に基づく指示待ち体質」をはじめ3つ程度のキーレバーを特定し、その変革を主軸とする施策設計・展開を行った。キーレバーは長年の成功モデルに基づき形成されており、社内では「常識」となっているため、自分達では気づきにくいことが多い。貴社が社員の意識・行動の変革が進まないと問題意識を感じておられるのであれば、第三者的な視点を活用して改めて現状を分析・キーレバーを特定し、最適な施策を設計・展開することが、変革実現の早道になると言えよう。

著者
金井 恭太郎

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