ブルーオーシャンで戦う人材獲得競争 - 過熱する争奪戦の中で求める人材を獲得する方法
16 4月 2019
多くの企業が創造的破壊に向き合う中、これを推し進めるのも、足踏みさせるのも人であり、喫緊課題として人材の獲得を挙げられる企業が増えている。
とりわけグローバル、デジタル、AI等、特定領域の人材は激しい獲得競争の中にあり、求める人材像に当てはまるいい人が見つからない、見つかっても処遇面で折合いがつかない・・・といったお悩みを日に数度うかがうこともある。
もし、これをお読みの方でも心当たりがおありなら、ぜひご一考いただきたい。
求める人材像が不明確では、”いい人”は見つけられないのは当たり前。しかし、実は、この時代、人材像だけが明確すぎでも”いい人”を見つけるのは難しい。
今、見つけるべきなのは、人材のブルーオーシャン=自社が求める”いい人“の一歩手前の人材市場なのである。
求める人材像が不明確ではいい人はみつけられない
当たり前と思われがちだが、新しい領域(グローバル、デジタル等)の担い手を求める際には、これが簡単なようで難しい。
高度専門人材の採用強化を掲げつつもこの辺りが曖昧なまま、特定タイトルや特定企業出身者の採用に対象を絞り込んだり、高度専門人材向けの特別処遇を開始されているケースはめずらしい話ではない。
まず、自社が求める人材に期待する役割は、明確に定義しておく必要がある。
本稿では、例として最もよく話題に上がるパワーワード、“デジタル人材”を挙げてみる。
デジタル人材をひとくくりにして明確に定義したものはなく、実際には事業の内容やステージ、主要技術によって人材に期待する役割は大きく異なる。
下記は事業フェーズを軸にまとめた区分だが、この他にコグニティブ、IoT、ブロックチェーン等技術要素を軸に含めると、さらに細分化がされてゆく。
①ビジネスを創出するデジタル人材:ビジネスデザイナー・プロデューサー(*タイトルはあくまで例)
:既存技術応用/新規開発/外部調達等、様々な方法で入手した新技術を核としたビジネスやサービスそのものの構想を描き、実現に導く役割。市場や顧客ニーズに加えて、自社技術に対する理解を基に、収益を生み出すビジネスモデル・戦略を策定する。
②ビジネスを開発・実装するデジタル人材:コアテクノロジーのエンジニア・研究者・データサイエンティスト(*タイトルはあくまで例)
:描かれた新規ビジネスのモデルや構想に対して、サービスやプロダクトそのものの設計・開発・実装に携わる役割。サービスやプロダクトを以下に技術的に実現する道筋を立て、運用までを考慮に入れて設計・開発を行う。物理的なものづくりやビジネスプロセスと、データや技術の橋渡し役となる。
③サービス・プロダクトを提供するデジタル人材:ITエンジニア・データサイエンティスト・プログラマー(*タイトルはあくまで例)
:ビジネスが市場に導入された後に、サービス提供者、プロダクト作成者としてビジネスに貢献する役割。テクニカルスキルをもって、高品質なサービス提供・プロダクト作成を行う。
見つけるべきは人材のブルーオーシャン
自社が求める人材像や要件を明確に持っていたとしても、希少な候補人材をレッドオーシャンから探し出すのは簡単なことではない。
これという候補が見つかっても、報酬水準が自社要件に合わない、既存制度に当てはめて処遇できない等、獲得に当たってのハードルは高く道のりは厳しい。
希少な人材を市場に求める場合、見つけることそのものの難易度に加え、争奪戦も熾烈なものになるケースが多い。争ってでもスター人材を確保することが必要なケースもあるものの、ビジネスに必要な人材の全てを同じ方法で調達するには無理がある。
こういったケースにおいては、数少ない“いい人”のキャリアパスや経験を遡って、“求める姿の一歩手前“の状況を特定し、一歩手前人材をターゲット人材市場として定義することが望ましい。
現状の人材獲得競争の熱が冷め、成熟するのを待っていては、ビジネススピードについてはいけない。過熱しきった競争に参加するよりも、人材のブルーオーシャンに戦場を移すことも検討に入れるべきである。
先に挙げたデジタル人材を例にとって、それぞれの区分で人材のブルーオーシャンを例示してみよう。
①ビジネスを創出するデジタル人材:技術系ベンチャー責任者・事業開発担当
②ビジネスを開発・実装するデジタル人材:製品/サービス開発部門・基礎/技術研究所
③サービス・プロダクトを提供するデジタル人材:ITサービス/通信事業・マーケティング部門・技術/品質部門
上記のように人材市場を特定してみると、人材市場にいる数少ないデジタル人材と比べて、市場価格(報酬水準)や現行処遇などに基づく獲得戦略が立てやすくなるのではないだろうか。
本稿では、例としてデジタル人材を挙げたが、グローバルなどの他領域のテーマにおいても、一歩手前人材を求める人材像と定義してみることで、新しい人材獲得アプローチが生まれる可能性がある。