マーサージャパン、TOPIX100・日経225企業の役員報酬における業績評価指標に係る導入・開示状況の調査結果を発表
2023年度の相対TSR・資本収益性指標・個人業績の導入企業数は22年度対比で増加、各評価指標の「目標水準」については更なる開示が望まれる
2024年12月18日
組織・人事、福利厚生・ウェルビーイング、年金・資産運用のグローバルリーダー、マーサーの日本法人であるマーサージャパン株式会社(本社:東京都港区、代表取締役CEO 草鹿 泰士)は、TOPIX100・日経225企業合計228社の役員報酬の業績連動報酬における評価指標として、相対TSR・資本収益性(ROE・ROIC)・個人業績に係る導入・開示状況の調査結果を発表した。
調査結果1. 相対TSRに係る開示状況
相対TSRを長期インセンティブに導入している企業は、2022年度の39社(17%)から2023年度の52社(23%)へと増加した。同指標は、キャピタルゲイン・インカムゲインの両観点から株主との利害共有を促進する指標であり、長期インセンティブにROEを導入している企業が増加していること(後段参照)と併せて考えると、長期インセンティブを通じて株主との利害共有性が一層高まっていることが伺える。
また、導入企業のうち目標水準を開示している企業は、2022年度の25社(相対TSR導入企業39社のうち64%)から2023年度の33社(相対TSR導入企業52社のうち63%)へと増加している。しかしながら、未だ半数に満たないことから一層の透明性向上が望まれる。
調査結果2. 資本収益性に係る開示状況(2023年度)
ROEを導入している企業は、2022年度の69社(30%)から23年度の80社(35%)へと増加した。2023年度において、ROEを短期インセンティブに導入している企業は25社、長期インセンティブに導入している企業は39社、短期・長期両方に導入している企業は16社であった。
ROICを導入している企業は、2022年度の36社(16%)から23年度の40社(17%)へと増加した。2023年度において、ROICを短期インセンティブに導入している企業は22社、長期インセンティブに導入している企業は16社、短期・長期両方に導入している企業は2社であった。
また、導入企業のうち目標水準を開示している企業は、ROEで52社(65%)、ROICで24社(60%)であり、未だ3分の1以上の企業が開示していないことから更なる開示の透明性向上が期待される。加えて、目標水準とともに資本コスト(株主資本コスト・WACC)との関連性を明示している企業は、ROEで0社(0%)、ROICで2社(5%)であり、極めて限定的であった。投資家にとって、①そもそも資本コストを何%と意識しているか、②その資本コストに対してスプレッドを生み出せているかが主要な関心事であることを踏まえると、目標水準と資本コストとの関連性に関しても開示が進むことが望ましい。
調査結果3. 個人業績に係る開示状況(2023年度)
個人業績を導入している企業は、2022年度の122社(53%)から23年度の125社(55%)に増加した。そして、2023年度において、個人業績を短期インセンティブに導入している企業は104社、長期インセンティブに導入している企業は4社、両方に導入している企業は17社であった。
また、CEOの個人業績を評価している企業は84社(個人業績の導入企業125社のうち67%)に留まった。他役員には個人業績評価を導入している一方、CEOには導入しない企業では、「CEOは全社業績にのみ責任を負うべきである」という考えがあるものと推察される。しかし、長期的な企業価値向上・持続的な事業成長の観点で、財務諸表に表れる結果のみならずプロセスも含めて評価する合理性は一定求められることから、CEOへの個人業績評価の導入も検討に値するものと考えられる。
組織・人事変革コンサルティング部門 役員報酬・コーポレートガバナンス プラクティスのアソシエイトコンサルタント大門弘和は、TOPIX100・日経225企業における業績評価指標の導入・開示状況に関して以下のように述べる。
「前回の調査1では、日本のトップ企業群における現時点での役員報酬の金額とその決定ロジックについて明らかにしました。今回の調査結果も踏まえると、金額の妥当性をより分かりやすく説明できるよう、達成すべき「目標」についても開示が進むことを期待します。これによって、投資家をはじめとするステークホルダーに対して、より一層の説得性をもって自社の役員報酬水準・体系を説明することが可能になるものと考えております」