マーサージャパン、厚生労働省による女性の活躍推進企業データベースを基に企業の公表結果を分析
女性の管理職登用が遅れている企業では、男女の賃金差異が大きい傾向
2023年8月29日
2022年7月8日に女性活躍推進法の省令・告示が改正され、正規従業員301人以上の企業に対して男女の賃金差異の公表が義務化されてから約1年が経過しました。各社の初回公表が徐々に進む中、日本企業全体の状況はどのようになっているのでしょうか?また、この段階でみられる傾向や賃金差異解消に向けた示唆はあるのでしょうか?
この度、マーサージャパンは、7月6日時点での厚生労働省 女性活躍推進企業データベースを基に、男女の賃金差異について分析を行いました。
業種・規模別 男女の賃金差異 (正規雇用/平均)
2023年7月6日現在、厚生労働省のデータベースに男女の賃金差異情報を公表している正社員301人以上の企業は5,520社でした。正規雇用従業員における男女の賃金差異の業種別・規模別を集計したところ、全企業平均では女性賃金は男性賃金の74%にとどまっていました。
業種別にみると、福祉・教育・医療業では男女の賃金差異が小さく、銀行・保険業においては差異が大きい傾向がみられました。同業種でも企業によって置かれている状況は異なり、男女の賃金差異解消に向けた施策には差があるものの、このランキングは、日本の社会規範の中で確立されてしまった性別職種分業の影響が根強く残っていることを感じさせる結果と言えるかもしれません。
企業規模別では、企業規模が小さくなるほど男女の賃金差異が縮小する傾向がみられました。この傾向には様々な要因が考えられますが、日系企業が海外企業に比して女性活躍推進の遅れを指摘される中、公表データの小規模企業として多くの外資系日本法人データが含まれていることが、小規模企業における賃金差異の縮小に影響を与えている可能性があります。
男女の賃金差異と女性の昇進しやすさとの関係
※「女性の管理職への昇進しやすさ」の定義
女性活躍推進データベース上で各社が公表している女性管理職比率を全体の女性従業員比率で割って個別企業の従業員分布差を補正し、女性管理職比率÷女性従業員比率=「女性の管理職への昇進しやすさ」と呼びます。
(補足) 例えば、女性管理職が10%ずついる2つの会社A社とB社は同じように見えるかもしれませんが、A社の女性従業員数が50%であれば、女性が管理職に昇進する可能性は、実際には10%÷50%=20%に過ぎない一方、B社の女性社員が10%であれば、この会社では女性社員も男性社員も管理職昇進のチャンスは平等と言えます。
会社X | 会社Y | |
A = 女性管理職比率 | 10% | 10% |
B = 女性労働者比率 | 50% | 10% |
A ÷ B = 女性管理職の昇進しやすさ | 20% | 100% |
1. 女性の管理職への昇進しやすさと男女の賃金差異には正の相関があり、女性の管理職登用が進めば男女の賃金差異は解消される可能性がある
2. 非製造業・サービス業は製造業に比べて女性が管理職へ昇進しやすく男女の賃金差異が小さい傾向が見られる
男女賃金差異 | 女性の管理職への昇進しやすさ | |
非製造業・サービス業(平均) | 74.5 | 0.39 |
製造業(平均) | 73.7 | 0.26 |
マーサーについて
マーサー はより輝かしい未来は築くことができるものと信じています。私たちはクライアントと共に、仕事そのものを再定義し必要な改革に導き、退職制度や年金の投資成果を再構築します。そして、真の健康とウェルビーイングへと導くビジョンを掲げています。全世界約25,000名のスタッフが43ヵ国をベースに、130ヵ国でクライアント企業と共に多様な課題に取り組み、最適なソリューションを総合的に提供しています。マーシュ・マクレナン(NYSE:MMC)グループの一員として、日本においては40年以上の豊富な実績とグローバル・ネットワークを活かし、あらゆる業種の企業・公共団体に対するサービス支援を行っています。
マーシュ・マクレナンについて
マーシュ・マクレナン(ニューヨーク証券取引所コード: MMC)は、グローバルプロフェッショナルサービスを提供する企業グループとして、顧客企業にリスク、戦略、人材分野の助言とソリューションを提供しています。マーシュ(保険仲介とリスクマネジメント)、ガイ・カーペンター(再保険仲介・コンサルティング)、マーサー (組織・人事マネジメント・コンサルティング)、そしてオリバー・ワイマン(戦略コンサルティング)から構成されており、年間総収入200億米ドル、全世界に85,000名以上の従業員を擁し、世界各地の顧客に分析・アドバイスを提供しています。