マーサー 「グローバル・ヘルス・トレンド調査 2021」結果を発表
日本, 30 3月 2022
- 2021年に9.6%に上昇した世界全体の医療費増加率は、コロナウイルス感染の先行きの不透明さや調査対象の地域差があるものの、2022年も同様の水準(9.5%)になると予想
- 健康保険を受託する保険会社の3分の2が、2022年にコロナウイルス感染による入院治療が保険の対象となると予想。また、コロナウイルス感染が医療費増大の最大の要因と認識
- 非感染症(とりわけ、肥満およびそれに伴う循環器系リスク、がん、循環器系疾患)の増加も保険会社が懸念する領域等
- 予防治療強化・医療費単価抑制ニーズの高まりを受け、保険会社各社は、医療機関の提携ネットワークを拡充する等の対応を推進
コロナウイルス感染症パンデミックの先行きは不透明だが、企業が提供するヘルスケアプログラム(健康保険)への影響が数年にもわたり続くことは明らかだ。マーサー・マーシュ・ベネフィット(以下、MMB)は、59ヵ国、210社の保険会社を対象に、トップトレンドを調査した。 多くの企業は自社のニーズに合わせて福利厚生を自由に設計することができる。これまでの慣行・規約、新しい需要、保険金請求から見出される可能性の発見により、新たな福利厚生制度の全体像を形成するために重要な役割を果たす。
マーサージャパン グローバルベネフィットコンサルティング部門 リーダー 石田 実は以下のように述べている。
「企業はビジネスと従業員のニーズを満たす福利厚生制度を形成できるよう、次に挙げる4つの医療のトレンドデータに注意を払う必要があります。
- 医療費増加率の上昇と医療費請求件数の増加
- コロナウイルス感染が保険金支払いに与えている影響
- 健康リスク低減のための、予防施策とセルフケアの必要性
- 医療の公平性担保の重要性
組織がすべきことは数多くあり、最も正しい方法はビジネスにおける優先順位によって異なります。その上で、日本企業のグローバル人事ご担当者は、日本から海外への赴任者の安心・安全の担保だけでなく、ローカル社員の採用・リテンションのためにも、海外法人において自社の対応力を実務レベルで見直す必要性があると考えます。
- 保険の適用範囲だけでなく、医療関連の支払いを確認する
- 補償内容の精査を忘れずに行う
- 質の高いセルフケア・ツールやデジタルツールの使用を奨励する
- 診断未確定の疾病リスクと予防医療を過小評価しない
- より包括的な補償を実現する機会を逃さない
私たちは、すべての企業に上記5つのアクションを取ることをお勧めします」
グローバル・ヘルス・トレンド調査の結果から見出された4つのトレンドの詳細は以下の通りである。
(1) 医療費の増加率の上昇と医療費請求件数の増加
本調査で、コロナウイルス感染により2020年に下がった世界の医療費増加率が、2021年にはパンデミック前の数値に戻ったことが明らかになった。この傾向は今後も続き、2022年の増加率は9.5%と予測されている。 世界的にも、保険会社の4分の3(75%)が医療費請求の活発化を言及しており、5分の2以上(41%)がパンデミック前よりも増加していることが分かった。
(2) コロナウイルス感染が保険金支払いに与えている影響
グローバル全体でコロナウイルス感染は現在、金額、頻度ともに3番目に高い医療費請求の原因となっている。パンデミックが及ぼす影響の実態はまだ明らかではない。しかし、保険会社は、コロナウイルス感染とメンタルリスクの2つが、企業が提供する医療保障のコスト上昇に最も影響を与えると認識し、回答した保険会社の3分の2は、2022年にCOVID-19の入院治療が保険でカバーされるようになると予想する。一方3分の1(34%)は、コロナウイルス感染に関連する既往症に対し、保険適用の制限を検討、または既に変更を行っている。
(3) 健康リスク軽減のための、予防とセルフケアの必要性
調査によると肥満およびそれに伴う循環器系へのリスクは、従業員の医療費を増加させる一番の要因であると判明している。また、保険会社への医療費請求の要因としては、がんと循環器系疾患が上位を占めており、これら慢性疾患への対処の一つとして、セルフケア製品を福利厚生プランに組み込むという方法が存在する。保険会社のほぼ10社に1社(8%)が、糖尿病の血液検査などの家庭用検査キットを福利厚生サービスの一部として企業に提供している。
(4) 医療の公平性確保の重要性
保険会社はより包括的な医療制度の実現に向けた様々な変革を行っている。例えば、回答した保険会社の30%が保険適用可能な医療機関の多様性を確保するため、ネットワークを見直している。例えば、同じ民族的背景や性別を有する医師を選べるようになるなど、医療に対する個人の選択の幅が広がる。4分の1以上(27%)の保険会社が、LGBTQ+の従業員がより包括的に保障を受けられるよう受給資格の変更を行っている。医療保険の申し込みに同性パートナーの名前を記載できるようにする変更などが含まれる。また、ほぼ4分の1(24%)が、交通費や食費、住居費などの社会的支援を検討している、または既に取り入れている。
「グローバル・ヘルス・トレンド調査 2021」の詳細を併せてご覧ください。
注意事項
マーサー・マーシュ・ベネフィットは、59ヵ国210社の保険会社を対象に、雇用者が提供するヘルスケアの将来を形作るトップトレンドについて調査しました。本レポートに反映されているデータは、2021年9月と10月に収集されたものです。機密保持の観点から、参加したすべての保険会社を開示することはできませんが、報告書への掲載に同意いただいた企業は、本文書の付録Dに掲載されています。
マーサー・マーシュ・ベネフィット(MMB)について
MMBは、マーサー、マーシュ、オリバー・ワイマンの3社で、中小企業、成長企業、グローバル企業向けに、一貫した従業員福利厚生サービスを提供するために誕生しました。世界73ヵ国に7,000人のスタッフを擁し、マーシュ・マクレナン(NYSE:MMC)が展開する150ヵ国以上の顧客にサービスを提供しています。
マーサーについて
マーサー はより輝かしい未来は築くことができるものと信じています。私たちはクライアントと共に、仕事そのものを再定義し必要な改革に導き、退職制度や年金の投資成果を再構築します。そして、真の健康とウェルビーイングへと導くビジョンを掲げています。全世界約25,000名のスタッフが43ヵ国をベースに、130ヵ国でクライアント企業と共に多様な課題に取り組み、最適なソリューションを総合的に提供しています。マーシュ・マクレナン(NYSE:MMC)グループの一員として、日本においては40年以上の豊富な実績とグローバル・ネットワークを活かし、あらゆる業種の企業・公共団体に対するサービス支援を行っています。
マーシュ・マクレナンについて
マーシュ・マクレナン(ニューヨーク証券取引所コード: MMC)は、グローバルプロフェッショナルサービスを提供する企業グループとして、顧客企業にリスク、戦略、人材分野の助言とソリューションを提供しています。マーシュ(保険仲介とリスクマネジメント)、ガイ・カーペンター(再保険仲介・コンサルティング)、マーサー (組織・人事マネジメント・コンサルティング)、そしてオリバー・ワイマン(戦略コンサルティング)から構成されており、年間総収入約200億米ドル、全世界に83,000名の従業員を擁し、世界各地の顧客に分析・アドバイスを提供しています。