Norio Shibayama

マーサージャパン柴山典央

極限で知る進化と成長

頼れる精鋭部隊。

ミッションは、日本国内の多国籍企業に対して、M&Aにおける人事問題や経営課題を解決すること。国を跨いだプロジェクトなので、海外出張が多くなることもあります。金曜の夜に出動要請を受けて、休日に飛行機に飛び乗るようなスクランブル発進もあります。現地に着いて週明けすぐに交渉を開始し、翌週には契約締結という慌ただしい展開も珍しくはありません。必要とされれば、世界中、すぐに何処へでも駆けつけます。常に臨戦態勢と言えますね。所属するグローバルM&Aコンサルティング部門では、新たな案件が発生すると、24時間以内に世界中から精鋭のコンサルタントが集結し、グローバルチームが結成されます。その仕組みは案外単純なんです。どの国にどんな人がいて得意分野は何か。必要な人材と能力を把握できれば、それに応じたメンバーの目星はつく。拠点やフィールドが違っても、いざという時に阿吽の呼吸で動けるのは、マーサーというチームの一員としての自覚とメンバーだけが共有できる信頼感があるからです。

 

買収契約締結の交渉の現場は、映画で観るシーンよりスリリングです。動く金額も莫大ですし、各々の会社の命運がかかっているわけですから、ディールチームの方々や弁護士たちが膝を突き合わせて丁々発止する場面に立ち合うこともあります。双方の言い分が合致せず、暗礁に乗り上げる度に、代案を提示して話し合ったり、それを延々と繰り返し、結局、成立しなかったということもあります。ならば、勝ち負けがすべてなのか?というと、そうでもありません。案件ごとにそれぞれ譲れない部分がありますから、クライアントさんにとって良い終わり方であることが何より大事。チームとしては、やり終えた時の安堵感と達成感が成功の証なんです。

必要とされれば世界中

どこにでも駆けつけます

常に臨戦態勢と言えますね

闘いの部隊は、整った。

M&Aのアドバイザーというとギラついたイメージがあるかもしれませんが、学生時代は化学を専攻していたので、一日中研究室にこもって水の電気分解反応をひたすら観察する淡々とした日々を送っていました。研究はそれこそ、失敗とちょっとした成功の繰り返しなのですが、学部の卒業間際にふと自覚してしまったんです。この先ずっと研究者として答えが出るかどうかわからない実験を何十年も続けられるほど、気は長くないなぁと。とはいえ、同級生たちが就活で群がる大企業には興味がない。理系から抜け出したい思いと新しい物好きが高じてベンチャーキャピタルに就職しましたが、知識もネットワークもない営業職で順風満帆なスタートとは言えなかった。そしてようやく、技術系の企業に出向する機会があり、やり甲斐を見出したものの、リーマンショックで市場は冷めきっているというぱっとしないファーストキャリアでした。

ならば一体、自分には何が足りないのか? 何が必要なのか? 切り札があるのだとしたら、それは高校時代からずっと続けていること。倒すか倒されるか、一瞬で勝負が決してしまう刺激。帯を引き締めた瞬間に血湧き、肉躍ること……柔道です。元国際強化選手だった顧問が、普通に受験して入学しただけの柔道イズムのいろはも分かっていない僕たちを超スパルタで鍛えてくれたんです。華々しい戦績は上げられませんでしたが、試合に出れば刺激もあり、スピード感もあった。きつい練習を続けながら、それなりに進化し成長している自分を感じていました。

紆余曲折あって就いた今の仕事も、刺激とスピード感は十分すぎるほどあります。でも、ちょっと仕事に疲れてきたときの楽しみがあります。10年ぐらい前からブラジリアン柔術に競技として取り組んでいて、茶帯を手にしました。最高位の黒帯までもう一息です。ブラジリアン柔術は、ブラジルのグレイシー一族が柔道を発展させた寝技中心の格闘技で、世界中に強豪がいます。だから、出張先で少し空いた時間があったら、道場を探して出稽古する。多忙を極めた状態で時差ボケですから、コンディション的には最悪なんですが、海外で見知らぬ外国人といきなり戦うなんて、ワクワクしませんか? 仕事は全面的に頭脳戦ですが、結局、筋肉感覚なのかなぁ。
Being tough isn’t enough.