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男女賃金差異は縮小傾向も、要因を説明できる企業は16% 

18 10月 2026

公開データで読み解く、男女賃金差異の改善と課題 - 開示は数値から説明の質へ -

男女の賃金差異(正規雇用/平均)

厚生労働省のデータベースに男女の賃金差異情報を提出した常時雇用労働者301人以上の正規雇用労働者の男女賃金差異(男性の賃金を100とした場合の女性の賃金)は全企業平均76.4%となり、前年の75.5%から0.9ポイント差異が縮まっています。過去3年間の集計でいずれもデータの登録があった企業に絞った場合でも、正規雇用の男女賃金差異は76.3%という結果となり、前年の75.3%から1.0ポイント差異は縮小しており、縮小幅は全企業平均と同程度となりました。したがって、実際に各社の賃金差異が縮小していることがわかりました。

また、男女賃金差異の項目にデータ登録がある企業数は21,102社となり、前年の13,726社から7,376社増加しています。主に増加しているのは、企業規模が101~300人の企業であり、これは、2026年4月1日より女性活躍推進法に基づき、常時雇用する労働者101人以上の企業に男女賃金差異と女性管理職比率の公表が義務付けられた影響が出始めているといえます。

開示企業が広がる中で、投資家・求職者をはじめとするステークホルダーにとっても、数値の水準に加え、その背景や改善方針を理解できることが重要になっています。

男女賃金差異×要因把握

本分析では、正規雇用労働者の男女賃金差異と、企業が賃金差異の要因を外部に説明できているかを組み合わせ、4象限に分類しました。ここでいう男女賃金差異の大小は全国平均76.4%(2026年7月15日時点)を基準値とし、76.4%超を「差異小」、76.4%以下を「差異大」としています。

また、要因把握の有無は、男女賃金差異注釈・説明欄または自由記載欄において、雇用形態、役職、職種、勤続年数、労働時間等の要因と、その因果関係が明示されている場合を指します。厚生労働省のデータベースに記載があるかで判断しているため、自社HP等で公表しているが、厚生労働省データベースで記載がない場合は、要因把握なしに分類されます。

図1 男女賃金差異×要因把握の有無の4象限
象限 企業数 構成比 賃金
差異
状態と次のアクション
Q1 差異大×要因把握あり 1,816社 8.6% 66.7% 実行・検証。把握済みの要因ごとに施策とKPIを結び、改善を検証する。
Q2 差異大×要因把握なし 8,327社 39.5% 67.0% 最優先。雇用形態・勤務時間・役職・職種等でデータを分解し、原因仮説を特定する。
Q3 差異小×要因把握あり 1,452社 6.9% 85.1% 好事例候補。残る構造要因を継続管理し、説明の型を社内外へ横展開する。
Q4 差異小×要因把握なし 9,507社 45.1% 86.5% 予防的管理。現時点の水準に依存せず、変動を説明できる分析基盤を整える。
注:対象は男女賃金差異を登録した21,102社。要因把握ありは3,268社、要因把握なしは17,834社。構成比は21,102社を分母として算出[

男女賃金差異の水準は改善傾向にある一方で、差異の背景を説明・開示できていない企業が大半を占めており、全体の約84%となります。

4象限のうち、最も優先的な対応が必要なのはQ2「差異大×要因把握なし」です。Q2は8,327社(39.5%)に上り、賃金比率が全国平均を下回ることに加え、その背景を外部に説明できる状態にない企業群です。数値の改善策を議論する前に、雇用形態、役職、職種、勤続年数、労働時間などでデータを分解し、原因仮説を特定することが出発点になります。

一方、最大層はQ4「差異小×要因把握なし」です。Q4は9,507社(45.1%)となり、全国平均を上回るものの、要因を説明していない企業群です。人員構成、管理職登用、雇用区分、働き方が変われば数値は変動します。Q4にとっての課題は「現時点の数値を良くすること」だけではなく、数値の変化を予見し説明できる仕組みを先に整えることです。

賃金差異要因別・業種別分析

次に、実際に要因を把握・開示している企業はどのような要因を挙げているのかをQ1「差異大×要因把握あり」とQ3「差異小×要因把握あり」を合わせた3,268社を対象に分析しました。

図2 男女賃金差異主要因ランキング

注:複数要因を記載している場合は、項目を重複してカウントする。
順位 主要因
(複数該当あり
該当社数 要因把握企業に
占める比率
記載内容
1 雇用形態 2,340社 71.6% 雇用区分・再雇用等の構成差を説明
2 管理職・役職構成 1,509社 46.2% 登用・役職構成の違いを説明
3 勤務時間 1,437社 44.0% 短時間勤務、所定労働時間、残業等の時
間配分を説明
4 職種・業務内容 1,076社 32.9% 職種、職務、職群・コース別の配置構成を説明
5 手当・賞与等 962社 29.4% 手当・賞与を含む賃金構成の違いを説明
6 勤続年数・年齢構成 853社 26.1% 年齢、勤続年数、採用・定着の構成を説明
要因把握企業に占める比率=該当社数 ÷ 分析対象企業数(3,268社)

要因把握企業は、1社当たり平均2.61要因を記載しており、72.8%が2要因以上を記載していました。この結果は、男女賃金差異が単一の要因で生じるものではなく、人材構成、働き方、登用・配置の積み重ねによって生じる構造的な課題であることを示しています。

特に最多要因は雇用形態(71.6%)であり、男女賃金差異は、同一の仕事に対する基本給の差だけでは説明できません。正規・非正規の男女構成の違いに加え、正規雇用の内部にも処遇の異なる区分があり、その構成差が差異を生む一因となっています。

したがって、企業が男女賃金差異の背景を把握し、改善につなげるには、男女の雇用区分、職種・役職、勤務時間・時間外労働の構成を分析するとともに、採用、配置、登用、両立支援、働き方の運用との関係を検証する必要があります。

さらに、要因を開示している企業の割合と、その主要因の組み合わせには、業種ごとの特徴があります。

図3  業種別男女賃金差異要因把握率ランキング(上位10業種)
順位 業種 分析対象
企業数
要因把握社数 業種内における
要因把握率
賃金差異
1 金融業、保険業 537社 176社 32.8% 68.5%
2 化学工業 371社 94社 25.3% 78.2%
3 報道 119社 29社 24.4% 77.9%
4 学術研究、専門・技術サービス業 418社 86社 20.6% 76.5%
5 不動産業、物品賃貸業 421社 77社 18.3% 73.1%
6 情報通信業 1,294社 233社 18.0% 79.8%
7 建設業 944社 169社 17.9% 71.6%
8 はん用機械器具・生産用機械器具・業務用機械器具製造業 219社 39社 17.8% 75.8%
9 鉄鋼業、非鉄金属・金属製品製造業 318社 55社 17.3% 77.6%
10 電子部品・デバイス・電子回路・電気機械器具・情報通信機械器具製造業 528社 87社 16.5% 74.6%
注:分析対象社数は正規雇用労働者の男女賃金差異を公表している企業とし、100社以上の業種を対象とする。要因把握社数は、Q1「差異大×要因把握あり」とQ3「差異小×要因把握あり」の合計。 
図4 男女賃金差異要因把握率上位3業種における主要要因
業種 主要因1 主要因2 主要因3
金融業、保険業 管理職・役職構成
130社(73.9%)
雇用形態
122社(69.3%)
職種・業務内容
96社(54.5%)
化学工業 雇用形態
62社(66.0%)
管理職・役職構成
61社(64.9%)25%25%
手当・賞与等
37社(39.4%)

報道

雇用形態
18社(62.1%)
勤続年数・年齢構成
17社(58.6%)
手当・賞与等
12社(41.4%)
注:括弧内は、各業種の要因記載社数(Q1+Q3)に占める当該要因の記載企業割合。

要因把握率が最も高いのは金融業、保険業で、平均賃金差異が68.5%と全国平均の76.4%を下回っており、男女賃金差異の水準が相対的に低い業種ほど、数値の公表だけでは十分ではなく、その背景を説明する必要性が高まることを示唆しています。

要因把握率上位3業種では、説明されている主要因の組み合わせが異なります。金融業・保険業では、管理職・役職構成(73.9%)、雇用形態(69.3%)、職種・業務内容(54.5%)が上位となりました。

化学工業では雇用形態と管理職・役職構成、報道では雇用形態と勤続年数・年齢構成が上位となるなど、説明すべき論点は業種によって異なります。したがって、自社の人材構成・業種特性に即して要因を特定し、数値とともに開示することが重要です。

今後の展望

このように、男女の賃金の差異をめぐる取り組みでは、単に数値を公表するだけでなく、差異の背景にある要因を自社の状況に即して把握し、改善に向けた取り組みと併せて説明することが求められます。

EUでは、賃金透明性に関する制度整備が進められており、賃金差異の報告に加えて、その背景の説明や必要な是正につなげる考え方が示されています。日本においても、開示をコンプライアンス対応で終わらせず、数値、その背景にある要因、今後の対応を一体で説明することが重要です。

今回の分析結果について、Marsh People and Investments, Workforce and rewardsの伊藤実和子は次のようにコメントしています。

「日本の平均賃金差異が縮小してきた背景には、各社の意識の変化に加えて、開示義務化という制度的な後押しがあると考えられます。今回の分析が示すように、男女の賃金差異は単一の要因ではなく、雇用形態や登用構成など複数の要因が積み重なって生まれる構造的な課題です。この構造を丁寧に説明することは、改善に向けたコミットメントの表明であり、ひいては差異縮小という結果にもつながる重要な一歩と言えるでしょう。企業の皆様には、まず自社の雇用形態や役職構成、勤務時間の内訳といった切り口でデータを分解し、その先にある採用・配置・登用のあり方の見直しにまでつなげていくことが、求められているのではないでしょうか。」

本内容が、皆様の組織におけるDEI・女性活躍推進の取り組みを検討する際の参考になれば幸いです。

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