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グローバル株式における米国偏重の是非 

月刊『企業年金』「資産運用コンサルタントの視点」(2026年4月号掲載)

1.はじめに

企業年金においてグローバル株式は最も重要なリターン・ドライバーであるが、近年では分散効果という点でやや疑念が生じるような状況となっている。【図1】は、グローバル株式におけるベンチマークであるMSCI ALL COUNTY及びMSCI KOKUSAIにおける地域・国別の割合を見たものであるが、前者では約64%、後者では約76%が米国となっており、米国に偏った状況となっている。本稿ではこうした状況においてグローバル株式投資についてどのように考え、また対応すべきかという点について考察していきたい。

【図1】グローバル株式における国・地域別割合

(注)上記欧州は先進国のみ
(出所)MSCI、LSEG Datastreamのデータを基にマーサー作成

2.なぜ米国のウェイトは増加したのか?

上述のように現在はグローバル株式において米国偏重と言っても良い状況であるが、過去はどうだったのか。【図2】は、グローバル株式における国・地域別割合の推移を見たものであるが、30年前の1995年12月末時点では、米国のウェイトは38.3%であり、4割を切っていた。そこから2008年のグローバル金融危機の時期に至るまでは米国のウェイトは約4割程度で推移していたものの、その後は一貫してウェイトを増加させており、現在は約3分の2を占めるまでに至っている。代わりにウェイトを減らしたのが欧州と日本であり、欧州は1995年時点の26.6%から14.2%へ、日本は同21.9%から4.8%へと急減している。すなわち欧州と日本の相対的地位の低下が米国のウェイト増加に繋がっていると言える。

【図2】グローバル株式 国・地域別割合推移

(出所)LSEG Datastreamのデータを基にマーサー作成
では、なぜ米国のウェイトは増加したのだろうか。【図3】は米国における過去20年間(2005年12月末〜2025年12月末)において米国においてどの業種が時価総額に寄与したのかを見たものであるが、テクノロジーセクター(Information Technology、Communication Services、Consumer Discretionaryの合計)の寄与が約63%となっている。すなわちこうしたテクノロジーセクターがもっぱら米国の時価総額の増加に寄与してきた、ということであり、特に情報技術(Information Technology)がその中でも大きな寄与を占めるに至っている。

【図3】米国 セクター別時価総額増加寄与率

(出所)LSEG Datastreamのデータを基にマーサー作成
以上より、米国の時価総額ウェイトが上昇してきた最も大きな理由として挙げられるのは、ここ20年で技術革新が大幅に進んで様々な分野でデジタル化が進んできたが、そうした中支配的な地位を確立し、その恩恵を独占に近い形で享受したのが米国企業であった、ということである。そもそもインターネット自体米国発祥であり、これまでインターネットに関する圧倒的な支配権を有してきたのは米国であった。米国に集中しているグローバル株式についてどう考えるかということについては、結局はこの増加を続けるテクノロジーセクターへの投資をどう考えるか、ひいては今後当該分野でグローバルでの勢力図がどのような方向に進んでいくのかという問題に帰着する、ということになるのである。

3.米国偏重の是正を図るべきか

こうした状況において、年金基金はどう対応すべきであろうか。現在の米国株式、特に大型成長株は各種バリュエーション指標でみると、歴史的に割高な水準にある。これにはかなりの程度将来への期待、特にAIへの期待が織り込まれているということであろう。ただ投資家の立場でAIについて今後どちらの方向に向かうのかを予測するのは困難だと考えられる。AIへの期待が行き過ぎであるとしてそこから降りるということにもリスクがあるという点は認識する必要がある。

米国株式は短期的にはバリュエーション調整が生じる可能性もあり、また現在時価総額上位にある企業間の優勝劣敗が明確になっていく局面もあるかもしれない。しかしながら、中長期的な視点では、今後もテクノロジーセクターにおいて圧倒的な技術革新と継続的な投資によって世界をリードしていくことが期待できること、日本や欧州等と異なって移民受け入れ等により労働力の維持が可能であるのに加え、解雇などの雇用調整が相対的に柔軟にできること、経営者が多くの自社株を保有している等、企業経営に株価を上げるインセンティブが働きやすいといったこと等もあって、なかなか他の地域が米国を凌駕していくことは容易ではないと考えられる。一方で昨年4月に米国が関税引き上げを発表した途端世界的に株式市場が急落したことに見られるように、米国に変調が生じた時にはむしろ米国以外の国の方がより影響を受ける可能性がある。こと投資対象としてみた場合には、米国株式の優位性は当面続くと考えた方がよいと思われる。

4.年金基金における現実的な対応

グローバル株式において米国株式の偏重を受け入れたとして、グローバル株式への投資には高いリスクも伴うことになる。そうしたリスクについては、リターンを損なわないようにしつつ極力抑制する手段を講じることが望ましい。そうした観点から実務上有効なのは「スタイル分散」を図って様々な局面で対応可能な分散したポートフォリオにしておくということである。コア、クオリティ、グロース、バリューの特定のスタイルに過度に賭けるのではなく、安定したリターンを目指す「コア」部分(パッシブを含む)を主体としながら、スタイルの偏りを調整するアプローチを推奨したい(【図4】)。こうしたスタイルリスクを管理しつつ、カントリーリスク、セクターリスク、為替リスクといったその他のリスクについてもコントロールしていくことも必要である。

【図4】グローバル株式ポートフォリオにおけるスタイル分散(例)

(出所)マーサー

現在のグローバル株式における米国偏重は確かにリスクとして認識する必要はあるが、スタイル分散を図ったり、アクティブ運用を活用する等、グローバル株式ポートフォリオの堅牢性を高めるための工夫をしながら付き合っていくことが賢明だと考えている。

 

本稿の内容や意見は筆者個人の見解であり、筆者の所属する組織の見解を示すものではありません。

著者
青木 大介

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