資産運用の高度化に向けて
『エンダウメント Vol.01』(オルイン別冊 掲載)
運用目的/目標リターン
運用目的と目標リターンの設定は資産運用の第一歩であるが、多くの学校法人では目的が明確に定められておらず、目標リターンも漠然と決められている場合が見受けられる。学校法人の資産運用は、「各学校法人が寄附行為や関連諸規程等に従い、自らの責任において決定するもの」*とされているが、この自由度の高さがかえって目標設定を難しくしているように思える。また、営利団体ではない学校法人にとって、目標リターンの設定は馴染みにくいものかもしれないが、先述のガイドブックでも運用目的は「大学の使命や経営方針、将来構想等を踏まえながら設定することが重要」と書かれており、幾つか目的も例示されているので、学校法人の方々には目的の設定に十分な議論を重ねていただきたい。
*「学校法人における資産運用について(通知)」(平成21年1月6日付け 20高私参第7号 文部科学省高等教育局私学部参事官通知)より長期投資とリスク許容度
リスク(標準偏差)の低減効果
一般的に、リスク性資産への投資はリスクの上昇が懸念されるが、リスクの低下が期待できる場合もある。投資におけるリスクは、通常、リターンの変動(標準偏差)を指すが、株や債券との相関が低いオルタナティブ投資の組み入れは、資産全体のリスクを下げる効果がある。特にプライベートエクイティ、不動産といったプライベート資産は、需給による価格変動の影響を受けにくい分、リターンに比して標準偏差は低く、リスクの低減効果が高い。このように、伝統的資産のみの運用から、オルタナティブを含めた運用へシフトすると、リスク(標準偏差)の低下が期待できることをご認識していただきたい。なお、プライベート資産の組み入れは流動性リスク(投資資金をすぐに資金化できないリスク)を負うことになるが、これは長期投資の観点から許容できるものといえる。
以上、3点についてコメントさせていただいたが、運用の高度化は一足飛びに実現できるものではなく、現時点でできること、将来目指す姿、それに向けてのロードマップの検討が必要であることも申し添えたい。