円安局面で見落としたくない為替リスク
『オルイン』(2026年秋号 掲載)
日銀がゼロ金利政策を打ち出してから2024年まで続く低金利環境の中、企業年金では、国内債券を補完する資産として、ヘッジ付き外国債券が広く活用されてきた。しかしながら、2022年以降の米欧の利上げにより価格が大きく下落したうえ、日米金利差の拡大でドル円のヘッジコストが一時5%台にまで上昇し、その後は高いヘッジコストがリターンを押し下げた。ヘッジ付き外国債券にとって非常に厳しい投資環境となったのである。足元のヘッジコストは3%近辺まで低下した一方、円安の流れは止まらず、為替ヘッジを継続することの妥当性を改めて問う声も出てくる。
しかしながら、為替ヘッジとは、為替リスクを抑えるための手段であり、その評価にあたっては、為替相場の方向性とリスクの大きさを分けて考える必要がある。ドル円の3年ローリングリスク(図)をみると、2021年ごろから現在まで続く円安局面では、2025年3月で一時12%台まで上昇した。過去を遡ってみると、2010年ごろにも同じ水準に達していたが、当時はむしろ円高局面であった。円高・円安という相場の方向性と、為替リスクの大きさは必ずしも一致しないことが確認できる。
図 【過去20年間のドル円の3年ローリングリスク】
従って、為替ヘッジ比率を検討する際には、今後の為替相場の見通しだけでなく、対象資産にどのような役割を期待しているかも重要になる。例えば、外国債券に安定的なインカムや国内債券の補完機能を期待するのであれば、ヘッジをかけて為替リスクを抑えたほうが良い。一方で、為替リスクを一定程度許容することで、結果的にポートフォリオ全体のリスク抑制に繋がる局面もある。実際、近年の急速な海外金利上昇局面では、円安による為替益が債券価格の下落を一部相殺した場面も見られた。恒常的な相関性ではないが、為替変動が必ずしも常にポートフォリオ全体のリスクを押し上げるわけではない点にも留意が必要である。
為替ヘッジを考える際には、「円はどちらに動くか」と同時に、「その為替リスクをなぜ持つのか」を問い直したい。