企業型DCで考えるアクティブ型商品の位置づけ
18 11月 2025
DCレター No.6
アクティブ型商品の特徴とラインナップ設計
アクティブ型商品は、一般的にパッシブ型商品に比べてリスクが高いほかに、信託報酬も相対的に高く設定される傾向があります。従って、これらのコストおよびリスクを上回る、代表的な市場指数対比で十分な超過リターンを中長期的に確保できない限り、パッシブ型商品の方が合理的な選択肢となる場面は少なくありません。また、アクティブ型商品は、代表的な市場指数と異なる銘柄選定や運用スタイルを取ることが多く、結果として相対的にリスクが高くなる傾向もあります。
下図は、企業型DCで採用可能な国内株式に投資するアクティブ商品の過去5年間のリターン、リスク(標準偏差)、運用効率性(リスク調整後リターン)の分布と、代表的な市場指数であるTOPIX指数を比較しています。リターンやリスク、運用の効率性のいずれをとっても、国内株式アクティブ型商品全体の3/4がTOPIX指数よりも劣後していることが見て取れます※ 。
企業型DCでは、加入者が自ら資産配分を決定する仕組みであるため、もしもアクティブ型商品がラインナップの「主力」として存在する場合、パフォーマンスが恒常的に劣後する恐れもあります。そのため、ラインナップの主力をパッシブ型商品に据え、アクティブ型商品は、ラインナップの補完として取り入れることが望ましいと考えられます。
【図】国内株式アクティブ型商品のパフォーマンス分布(2025年9月末時点)
採用時に考えたいファンドの役割
アクティブ型商品をラインナップの補完として採用するのであれば、役割を明確にすることが重要です。例えば、リターン面での上振れ余地を持つ商品として、運用成績に更なる貢献が期待できる場合、リターンドライバーとしての役割、または、パッシブ型商品では拾いきれない投資テーマやスタイルを提供する役割などが挙げられます。株式で言えば、バリュースタイル・グローススタイルといったスタイル別の商品や、ESG投資をテーマとするファンド等が挙げられます。
また、気候変動、女性活躍など、加入者の価値観に沿った投資機会を提示することで、企業の理念や文化に沿った選択肢としての提供も考えられます。
採用可否を判断するための視点
リターンドライバーとしての役割を求めるのであれば、中長期的に超過リターンを確保できているかを確認します。特定な投資テーマや投資スタイルの提供を役割とする場合、テーマやスタイルに沿った運用を続けているか、それに相応しい成果が出ているかが重要になってきます。役割を十分に果たせていない場合には、その採用の妥当性自体を見直す必要もあります。
採用後に求められるモニタリングと情報提供
アクティブ型商品は、導入して終わりではありません。相場環境や運用方針の変化によって運用成績が大きく左右されるため、定量(中長期的な運用実績)および定性(運用方針・マザーファンド変更など)の両面からの継続的なモニタリングが求められます。
また、リスクの高い商品である以上、加入者に対して丁寧な情報提供や説明機会を設けることも不可欠です。単に「選べるようにする」だけではなく、「納得して選べるようにする」ことが、企業型DC制度の設計者としての責任ともいえるでしょう。
企業型DCにおけるアクティブ型商品については、「必要か不要か」といった単純な二択にとどまらず、適切なモニタリングを前提に選定を行えば、加入者の選択肢拡充やエンゲージメント向上に資する可能性は十分にあると言えるでしょう。