2026年施行の法改正から考える企業型DCの設計ポイント
24 2月 2026
2026年施行DC法改正の概要(企業型DC・iDeCo関連)
また、本法改正に伴う今後の退職金制度の設計におけるポイントとして、前コラムで「拠出限度額の引き上げに伴う企業型DCの導入・割合引上げの可能性」、「加入者掛金の拠出要件廃止に伴うiDeCo対比でのマッチング拠出の優位性増加」を挙げた。
(参考コラム:令和7年度税制改正大綱から考える退職金制度の設計ポイント)
今回の政令公布に伴うアップデート
今回新たに厚生労働省より示された項目は以下の通りである。
1.法改正の施行日
事前に公表されていた予定の通り、法改正の施行日が以下のように決定された。
- 2026年4月1日施行:マッチング拠出における加入者掛金の拠出要件廃止(企業型DC)
- 2026年12月1日施行:拠出限度額引き上げ(企業型DC、iDeCo)、加入可能年齢引き上げ(iDeCo)
2.各法改正の詳細
- マッチング拠出における加入者掛金の拠出要件廃止(企業型DC)
– 法改正の施行に伴って加入者掛金額の制限を撤廃する規約変更を行う場合は、「特に軽微な変更」として厚生局への届出不要となる。ただし、法改正以降も規約変更を行わなかった場合には、引き続き加入者掛金額に制限が設けられることとなる(制限撤廃には規約変更が必要)
– 2026年4月-11月の間、加入者が事業主掛金額を超えて加入者掛金額を拠出する変更を初めて行う場合、当該変更を「加入者掛金の変更は年1回に限ること」の例外とする経過措置を設ける(届出不要の規約変更が必要)
- 拠出限度額引き上げ(企業型DC)
– DB実施企業においてDC掛金上限額を2.75万円とする経過措置(2024年12月施行)は引き続き適用される
企業の人事ご担当者における検討ポイント
本アップデートに伴い、退職金制度における実務的な検討ポイントは以下の通りである。
1.マッチング拠出における加入者掛金の拠出要件廃止(企業型DC)
加入者にとってメリットのある改正であるため、基本的には制度設計に反映させるべきである。その際、以下の工程が必要と考えられる。
- 規約変更(届出不要)
- 退職金規程の変更(改正前の加入者掛金の制約事項等が定めてある場合)
- 加入者掛金申込書/加入者掛金申込受付システム等の改修
- 2026年4月-11月の間、加入者が事業主掛金額を超えて加入者掛金額を拠出する変更を初めて行う場合、当該変更を「加入者掛金の変更は年1回に限ること」の例外とすることへの対応
- 上記変更について、従業員への周知
上記の内容については、DC運営管理機関に相談しながらスケジュールに沿って進めていくことを推奨する。
2.拠出限度額引き上げ(企業型DC)
DB実施企業においてDC掛金上限額を2.75万円とする経過措置(2024年12月施行)は引き続き適用されるため、規約変更を行わない限り7千円分の拠出限度額引き上げの影響を受けることはない。ただし、規約変更を行う場合には当該経過措置が解除され、DC拠出限度額は「月額2.75万円」から「月額6.2万円-DB掛金相当額」に変更される。
2024年12月の改正施行時点でDBおよびDCを実施していた企業については、施行日以降に承認申請を伴う規約変更を行う等の経過措置適用終了事由に該当しない限りは、経過措置の適用を受けている。この経過措置が適用されているかどうかはDC規約に明記されているためまずは最新の規約をご確認いただきたいが、ここでは経過措置が適用されている企業において、2026年12月の拠出限度額引き上げの改正に伴い検討すべき事項について考えたい。
- DB掛金相当額≦2.75万円*の場合
加入者にとって有利な改正となるため、基本的には制度設計に反映させるべきである。例えばDB掛金相当額が2万円のケースでは、DC拠出限度額が月額2.75万円(経過措置適用)から月額4.2万円(6.2万円-2万円)へと大幅に引き上がることとなる。
拠出可能額の引き上げ分については、企業型DCの事業主掛金の増額または加入者掛金の拠出枠の拡大に充てられる。前者の場合、単純な増額の他に退職給付制度全体の給付額は変えずにDCの割合を増加させる制度変更も考えられる。後者の場合、退職給付制度自体に変更はなく、従業員が任意で拠出できる加入者掛金の金額が増額となる。
ただし、拠出可能額の引き上げに際し、DBの制度設計の内容によってはDB年金減額に該当する場合もあるため退職給付制度全体のバランスを見ながら慎重に行うことが必要である。
- DB掛金相当額>2.75万円の場合
改正を制度設計に反映させる場合、DC掛金の拠出上限が減少する場合もあるため慎重に検討すべきである。例えばDB掛金相当額が5万円のケースでは、DC拠出限度額が月額2.75万円(経過措置適用)から月額1.2万円(6.2万円-5万円)へと引き下がることとなるため、ひとまず経過措置を継続適用させる判断は合理的と言える。
一方従業員目線では、DB掛金相当額が高くDBの給付が充実していることは自社の退職給付制度における一つの安心材料となり得るが、DC拠出上限額の引き上げの恩恵は受けることができない。従って現行の退職給付制度の枠組みを維持する場合、人事担当者は問い合わせを受けた場合に従業員の理解を得られるよう丁寧に説明することが必要である。
また、企業再編や人事制度の改訂等の要因により経過措置を継続適用できない規約変更が発生するリスクについても認識しておく必要がある。更に、今後もDCの拠出上限額を引き上げる法改正が続いていくかどうかの動向も注視した上で、中長期的に見てDB制度の見直しも含めて退職給付制度全体の枠組みを再考することも重要である。
*本コラムにおいては単純化のため法令上の経過措置の「2.75万円」を基準にDB掛金相当額の場合分けを行っているが、拠出額7千円引き上げ後はDB掛金相当額が「3.45万円」までは経過措置適用を停止することでDC拠出拠出限度額が引き上がる可能性がある。ただし、DB掛金相当額はDBの財政再計算の度に変動するため注意が必要である
法改正を契機とした退職給付制度の見直し
企業の人事担当者におかれては、法改正を自社の退職給付制度を見直す一つの契機と捉え、法改正の主旨・方向性や自社の人事制度と照らし合わせて現在の退職給付制度をより良いものにしていけるかどうかを検討することを推奨したい。
例えば以下のような課題について、外部専門家にご相談してみてはいかがだろうか。
- 自社の制度設計の現状と法改正の影響を確認したい
- 考えられる変更の選択肢とメリットデメリット(留意点含む)を知りたい
- 制度を変更した場合のインパクトをFinance面HR面双方から確認したい
- 導入に向けたアクションプランの構築と実行に向けたサポートがほしい