ガチャ問題で考える、パーソナリティデータを活用した人材マネジメント 

20 1月 2025

ガチャ問題に直面する日本の企業

終身雇用という概念が薄れ、多様な価値観が重視される時代となり、企業にとって従来のマネジメント手法での対応が難しくなってきている。子育てや介護に伴う柔軟な働き方、コロナ禍を経て定着したリモートワークやハイブリッドワーク、さらには国籍やジェンダーなどに関する多様性の重要性が高まる中、働き方のニーズは大きく変わりつつある。

キャリア教育も社会に浸透してくるなど、特に若い世代は自分自身のキャリアを自ら考え選ぼうとする習慣が根付いてきた。また、若い世代であれば、小さい頃からAIなどの最新技術に触れており、デジタルネイティブとして仕事でもより自分の専門性・特技を活かしたいと考える人材も増えてきている。

こうした多様性を受け入れようとする企業努力が続く一方、「配属ガチャ」という言葉に代表されるガチャ問題1が表出してきた。これまで多くの日本企業はメンバーシップ型雇用が主流で、新卒を長期間にわたる雇用維持を前提に一律に採用、配属、育成するアプローチが一般的だった。このアプローチは、組織のニーズが個人の希望を優先する文化を生み出し、社員が会社の要求に応じた役割を受け入れることで成り立っている。この中で、新卒採用の競争激化による内定辞退や若年層退職率の増加に対処するため、初任地やポジションを事前に確約する仕組みの導入など、各社工夫を凝らしてはいるものの十分に対応できているとはいえない。

1 カプセルトイの「ガチャ」に新卒採用時の配属や上司との関係をなぞらえた言葉。 配属で上司との関係で上司ガチャと感じる、また新入社員が配属ガチャと感じるなど、「ハズレ」と感じた場合に離職率の増加やエンゲージメントの低下が起きうる問題を指す。

ガチャ問題などの人材ミスマッチを防ぐ鍵としてのパーソナリティ

多様な価値観の人材が増える中、組織でガチャ問題のような人材のミスマッチを回避するためには何をすればいいのか。

私たちは「パーソナリティ」が鍵になると考えている。パーソナリティとは、個人の先天的かつ潜在的な性格のことで、その人の個性を生み出す基礎とも言い換えられる。図1にあるように、ヒトの質(特性)はアイスバーグモデルで描かれることが多い。パーソナリティは、その中でも氷山の最下層に位置する特性で見えにくく潜在的、かつ先天的に身についているものと考えられている。

図1. ヒトの質のアイスバーグモデルと、入社から時間軸で示した人材マネジメントにおけるパーソナリティの重要性

個々のパーソナリティを理解し活用すれば、ガチャ問題のリスクを回避できる。新卒採用を例に挙げると、採用段階における面接、そして入社後の配属、の2つの段階でリスクが存在する。まず、面接は採用候補者が会社のイメージや仕事内容、そして働く相手を理解できる重要な機会だ。相性の悪い面接官や、コミュニケーションが苦手な人に当たると、候補者から見て会社に対する印象が悪くなり、入社を辞退する可能性がある。これを防ぐために、パーソナリティに基づき「相性が合いそう」かつ「コミュニケーションが得意」な面接官を割り当てることで、候補者の面接体験を向上させ、採用ミスマッチを防ぐことにつながる。また、入社後の配属でも、上司との相性が悪いと退職につながるリスクがある。ある調査において、退職理由のトップは「職場の人間関係が悪い」という結果が出ている2。面接と同様に、パーソナリティを活用してより相性が合いそうな上司を割り当てることで、退職や離職のリスク軽減が期待できる。

パーソナリティプロファイリング・マッチングを使った効果的な人材マネジメントの実現

これらはパーソナリティを使う一つの例で、「パーソナリティプロファイリング」と「パーソナリティマッチング」という2つの手法を組み合わせることで可能となる。パーソナリティプロファイリングは、独自の多次元の指標に沿ったパーソナリティのデータを作ることだ。適性検査といわれているセルフアセスメントを使ってデータを生成される。パーソナリティマッチングは、この多次元データを使って2者間の距離を測る。マッチ度が高い、すなわち距離が近いと、考え方や価値観が「似ている」と思ったり、相性が良いと感じたりしやすい。

マーサーでは、独自のAIモデルを使ったパーソナリティプロファイリングとパーソナリティマッチングのテクノロジーを使って、上記の採用領域をはじめ、配属、育成、チーミングなど様々な人材マネジメントに活用できる「パーソナリティデータソリューション」を開発し、当ソリューションを使った実証実験についてのニュースリリースも発表している3,4。私たちは、このソリューションを通じて、一人ひとりのパーソナリティを最大限活かせる人材マネジメントを実現し、ガチャ問題の解消にとどまらず、適材適所の実現、多様性を活かして働きがいのある社会にしていきたいと考えている。

問い合わせ先

マーサージャパン株式会社 ピープルサイエンスチーム
E-mail: #MercerAPACPeopleScienceTeam@mercer.com
著者
諸橋 峰雄
三隅 光
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